3Dプリンターの基本と宇宙業界が導入しているメーカー一覧

nasa_3Dプリンターモデル

credit: NASA

コロナの影響が大きく、国内では思うように伸びていない3Dプリンター市場ですが海外で大きな進捗があります。航空・宇宙業界ではもはや使っていない製造会社はいないかもしれません。

この記事ではそんな3Dプリンターを実際に導入するための流れ、扱う人材の要件、宇宙業界で有名なメーカー企業を紹介します。

目次

3Dプリンターとは

3Dプリンターとは米国の宇宙業界に参入する人工衛星やロケット製造企業で、導入していない会社はないと言われるほど米国では浸透している部品製造技術です。

SpaceX社はもちろん、人工衛星を多数製造するボーイング社や最近ではRelativitySpace社が100%3Dプリンター製のロケットを作ると宣言したことで有名になりました。

3Dプリンターで製造する流れ

まずは3Dプリンター活用ステップを見てみましょう。

3Dプリンターで物が出来上がるまでの流れ

  1. 設計
  2. 3Dデータ作成(3DCAD)
  3. データ変換(データ修正もここで)
  4. データ配置
  5. 3Dプリンターへデータ転送
  6. 3Dプリンターで造形
  7. 取り出し&仕上げ

設計の段階では、3Dデータ作成前の構図を考えたり既存のものを3Dプリンターで出力したい場合は現物をスキャンしたりします。

3Dデータ作成は3DCADソフトを使って行いますが、自由に好きな形状を作成することができることが大きな特徴です。現物をスキャンして3Dデータを作ることもできますが、こちらはスキャンできない箇所や細かい凹凸は再現できません。そのため、現物と全く同じコピー品を作成することはできません。

結論3Dプリンターの導入にあたっては、3Dデータ作成が可能な人材が必須となってきます。特に最初導入する際はトラブルが続くと思うので、3Dプリンターを扱える人材確保は重要な課題です。

3Dプリンターの種類

3Dプリンターは大きく分けると

・造形方式

・素材

で分けられます。

造形方式

細かく見ようとすればRICOH社による記事が分かりやすいですが、大きく分けると下記となります。

  1. 熱溶解積層方式
  2. 光造形方式
  3. インクジェット方式
  4. 粉末焼結方式
  5. 粉末固着(接着)方式

熱溶解積層方式

フィラメントと呼ばれる樹脂線をノズルから熱で溶かしながら押し出し、積層していく方式です。最も安価で知られています。

  • 利点:安価な3Dプリンターが多い、丈夫で耐熱性の高い造形物が作れる、多様な種類のフィラメントを使用できる
  • 欠点:造形精度が比較的低い、積層痕が目立つ、造形に時間がかかる

光造形方式

光感性樹脂を光で硬化させて積層していく方式です。

  • 利点:高精度な造形物が作れる、滑らかな表面仕上がり、造形速度が比較的速い
  • 欠点:光感性樹脂は比較的高い、造形後の樹脂は日光に弱く、時間経過で劣化しやすい、サポート材が必要

インクジェット方式

インクジェットプリンターのように樹脂を噴射して積層していく方式です。

  • 利点:高精度な造形物が作れる、複雑な形状の造形が可能、フルカラー造形も可能
  • 欠点:造形速度が遅い、インクジェットプリンター用のインクは比較的高い、サポート材が必要

粉末床溶融結合方式

金属粉末や樹脂粉末をレーザーで焼結させて積層していく方式です。航空宇宙業界で取り扱われる3CDプリンターはこちらの方式が多いです。

  • 利点:高強度で高精度の造形物が作れる、金属製の造形物も作れる、サポート材が不要
  • 欠点:3Dプリンターが高価、造形後に後処理が必要

粉末固着方式

バインダーと呼ばれる接着剤を噴射して粉末を固めながら積層していく方式です。

  • 利点:安価な3Dプリンターが多い、丈夫な造形物が作れる、サポート材が不要
  • 欠点:造形精度が比較的低い、積層痕が目立つ、造形後に後処理が必要

素材

3Dプリンターで使用する素材は、造形したいものや用途によって選ぶ必要があります。例えば、強度が必要なものは金属や高強度樹脂、精密なものは光造形樹脂、安価で作りたいものはPLA樹脂などがおすすめです。

なお後述するカーボンファイバーは繊維の一種です。単体では3Dプリンターで造形することはできません。熱可塑性樹脂や光造形樹脂に混ぜて使用されることが多く、その場合、これらの樹脂の強化材として機能します。つまり、樹脂の強度や剛性を向上させるために使用されます。

熱可塑性樹脂

  • ABS樹脂:安価で丈夫、耐熱性が高い、積層痕が目立つ
  • PLA樹脂:生分解性、低温で造形できる、反りにくい
  • PETG樹脂:ABS樹脂とPLA樹脂の利点を併せ持つ、光沢のある仕上がり
  • TPU樹脂:柔軟性・弾力性に優れる、衝撃吸収性に高い
  • PC樹脂:高強度・耐熱性・耐薬品性に優れる

光造形樹脂

  • アクリル樹脂:透明度が高く、滑らかな仕上がり
  • エポキシ樹脂:高強度・耐熱性・耐薬品性に優れる
  • ポリウレタン樹脂:柔軟性・弾力性に優れる

金属

  • ステンレス鋼:高強度・耐食性に優れる
  • チタン:軽量で高強度、耐食性に優れる
  • アルミニウム:軽量で加工性に優れる

その他

  • 石膏:安価で造形しやすい、後から塗装しやすい
  • ワックス:精密な造形が可能、鋳造用として利用できる

3Dプリンターを扱うための必須要件

3Dプリンターを扱うために必要な要件は人です。人材の要件は、大きく4つです。

①3Dデータ作成スキル

これは扱うにあたって大前提となるスキルで、3Dデータを設計できなければ3Dプリンターは使えません。設計には主に3D CADソフトが使われます。有名なもので無料版もある「Fusion 360」です。

②失敗しながら改善していくPDCAスキル

造形には失敗がつきもの。 変更点を書き出して、その結果を記録していきながら微修正をなん度も行い最終的に成果物を作る思考能力は最も大切かもしれません。

③スライサーソフトの操作スキル

これは、各3Dプリンターごとに存在するソフトウェアの活用スキルです。

実際に造形する前に、3Dデータの形式を3Dプリンター用のものに変換し、どのような方向、スピード、積層ピッチで材料ノズルを動かし、積層していくのかプログラムを作る必要があります。

ソフト上で造形のシミュレーションも出来、完成までの時間、使用する材料の量まで確認することができます。

この時に、造形物の置き方を変えたり使う造形剤の調整が後の造形工程で成功・失敗を定義するので操作スキルとありますがプラスして完成系を想像する能力も重要になってきます。

④仕上げ(後加工)スキル

扱う3Dプリンターによって変わってくるケースもありますが、よくある後加工は「サポート除去」と「やすり掛け」です。

造形する際に取り付けた「サポート」は最後外しますが、小さい部品を造形する際は精密な手作業となります。

ヤスリがけは滑らかにするための工程ですが、こちらも扱う樹脂や金属ごとに異なりコツが必要になります。

航空・宇宙業界で導入されている3Dプリンターメーカー

ここでは、様々な3Dプリンターの中で宇宙業界にマッチした3Dプリンターを紹介します。

VELO3D

VELO3Dは金属3Dプリンターを販売しているベンチャーです。SpaceX社もVELO3Dの3Dプリンターを導入していることで知られています。

Markforged

Markforged社は高い強度を誇るカーボンファイバーと金属に特化した3Dプリンターを販売しています。カーボンファイバーは鉄の1/4の重量で10倍の強度を誇る素材ですが、Markforged社はその3Dプリンターは製造工程において独自の特許を取得しています。業界で唯一の強度を誇る樹脂パーツを作れることで有名です。

NASAが公開している3Dモデル情報

ちなみにNASAは3Dモデルのリソースをサイト上に公開しています。興味ある方は見てみてください😊

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