現在宇宙飛行士が滞在する場所で皆さんが思い浮かぶのは巨大な人工衛星「国際宇宙ステーション (ISS) 」でしょう。ISSは地球を周回する宇宙ステーションです。もともとISSは2024年に終了するとされていました。現在は延長しておりますが、終了を想定し各国が次の宇宙ステーション建設に構想を立てています。
実は中国も単独で現在宇宙ステーションを建設しました。すでに半年に一回交代制で中国の宇宙飛行士は宇宙ステーションの増築も進めています。
この記事ではISSの凄さと各国の宇宙ステーションおよび宇宙ホテル建設の動きを紹介します。
国際宇宙ステーション (ISS)
2024年現在、唯一完成し稼働している宇宙ステーションは、国際宇宙ステーション (ISS) です。ISSは、ロシア、米国、日本、欧州宇宙機関 (ESA)、カナダ、およびブラジルの宇宙機関の協力により建設・運用されています。このステーションには、2 人から 3 人の宇宙飛行士が常駐しており、科学研究、技術開発、および地球観測の国際的な協力の場としてさまざまな科学実験を行っています。
高度約 400 キロメートルの地球周回軌道に位置し時速 27,600 キロメートルで移動しています。とてつもない速度ですよね。よって約 90 分ごとに地球を 1 周回します。ステーションの大きさは、サッカー場の大きさと同じくらいです。重量は約 450,000 キログラムです。
建設および運用にかかるコストは1,500億ドル(約20兆円)にのぼるとされており、参加している各国がお金を出しあっています。
※このコストは真実かどうかの検証が出来ていないため、嘘かもしれない前提で認識してください。
1998 年から有人が居住しており、地球上での継続的な人間の存在の最長記録を保持しています。 もともと2024年に終了予定でしたが、ISSの運用期間は2030年まで延長される予定です。
ISSの構成要素
ISS はサッカー場の大きさと同じくらいですが、各国が参加しているため複数のモジュールで構成されています。ISS の主な構成要素は以下の通りです。
1. アメリカ側モジュール
- ノードモジュール: 3つのモジュール(ユニティ、ハーモニー、トランキリティ)があり、各モジュールは複数のモジュールを接続する役割を果たします。
- 居住モジュール: デスティニーとクエストの2つのモジュールがあり、宇宙飛行士の居住スペースや作業スペースとして使用されます。
- 実験モジュール: コロンバスとバーモントの2つのモジュールがあり、様々な科学実験が行われます。
- キュポラ: 窓が設置されたモジュールで、地球観測やロボットアームの操作に使用されます。
2. ロシア側モジュール
- 居住モジュール: ズヴェズダとザリャの2つのモジュールがあり、宇宙飛行士の居住スペースや作業スペースとして使用されます。
- 実験モジュール: ピースとポイスクの2つのモジュールがあり、様々な科学実験が行われます。
- ドッキングモジュール: プログレス補給船やソユーズ宇宙船のドッキングに使用されます。
3. 日本モジュール (きぼう)
きぼうは2008年に打ち上げられました。
- きぼう日本実験モジュール: 宇宙飛行士の居住スペースや作業スペース、実験スペースとして使用されます。
- きぼうロボットアーム: モジュールの移動や物資の搬送など、様々な作業に使用されます。
- きぼうエアロック: 宇宙飛行士の船外活動に使用されます。
4. その他
- 太陽電池パドル: 電力を供給するために太陽光発電を行います。
- 熱ラジエーター: 余分な熱を宇宙空間へ放出します。
- ロボットアーム: モジュールの移動や物資の搬送など、様々な作業に使用されます。
これらの構成要素は、互いに接続されて巨大な構造体を形成しており、宇宙飛行士の居住空間、実験スペース、作業スペースとして使用されています。
これまでの成果
人類史上最大の宇宙開発プロジェクトであるISSは科学、技術、国際協力など、様々な分野において数多くの功績を残してきました。
科学研究の推進
ISSは、微小重力環境という独特な環境を利用した様々な科学実験が行われています。これまでに、以下のような重要な成果が得られています。
- 宇宙飛行士の長期滞在における健康管理に関するデータ収集: 長期滞在による健康への影響は、宇宙開発における大きな課題の一つです。ISSでは、宇宙飛行士の健康状態を長期的に調査・分析することで、将来の火星探査など長期宇宙飛行に向けた健康管理技術の開発に貢献しています。
- 微小重力環境での材料科学: 微小重力環境では、地球上では不可能な材料の結晶成長や材料合成などが行えます。ISSでは、これらの研究を通じて、次世代の電子デバイスや医療材料などの開発に役立つ成果が得られています。
- 地球観測: ISSは、地球を周回しながら様々な観測を行っています。これらの観測データは、地球環境の変化や気象予測、災害対策などに活用されています。
宇宙技術の開発
ISSは、宇宙空間でのロボット技術や宇宙船の運用技術など、様々な宇宙技術の開発・実証の場としても活用されています。
- ロボット技術: ISSでは、カナダアーム2やきぼうロボットアームなどのロボットアームが運用されており、モジュールの移動や物資の搬送など様々な作業に使用されています。これらのロボット技術は、将来の宇宙探査や宇宙開発において重要な役割を果たすことが期待されています。
- 宇宙船の運用技術: ISSは、複数の宇宙船がドッキングして運用される複雑なシステムです。ISSの運用を通じて、宇宙船の自動ドッキング技術や宇宙空間での作業技術などが開発・実証されています。
国際協力の象徴
ISSは、米国、ロシア、日本、欧州宇宙機関(ESA)、カナダ、およびブラジルの宇宙機関が協力して建設・運用されています。冷戦終結後の東西宇宙協力の象徴として、政治的にも重要な役割を果たしてきました。
なぜ終了するのか?
これまでISSは延命処置を繰り返し、期間を伸ばしていますがそもそも人工衛星には寿命があります。小さい衛星で3~5年、大きな衛星でも15年とされる中ISSやハッブル宇宙望遠鏡は延命処置のお陰で26年、33年と長生きしてます。
それでも2030年の終了は決定とされました。主な理由は以下の通りです。
1. 老朽化:
ISSは1998年に建設が開始され、2024年現在、26年以上運用されています。老朽化による故障のリスクが増加しており、安全な運用を維持することが困難になってきています。
2. 費用:
ISSの運用には年間約40億米ドル(約5600億円)もの費用がかかっています。各国は財政難や宇宙開発の重点項目の変化により、ISSへの予算拠出を継続することが困難になっています。
3. 後継施設:
ISSの運用終了後には、民間企業が運営する宇宙ステーションや、中国が建設する中国宇宙ステーション(CSS)などが、宇宙開発の拠点となることが期待されています。
4. 技術進歩:
ISSの建設当初には実現不可能だった技術が、近年では進歩しています。例えば、3Dプリンター技術を用いた宇宙ステーションのモジュール製造などが可能になり、より安価で効率的な宇宙開発が可能になってきています。
5. 国際情勢:
ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、ロシアと欧米の宇宙開発協力関係が悪化しています。ISSの運用にはロシアの協力が不可欠であるため、この状況が長期化する場合は、ISSの運用継続に影響を与える可能性もあります。
ISSの運用終了時期:
ISSの運用終了時期は、2030年頃とされています。しかし、上記の要因によっては、それよりも早まる可能性もあるようです。
次世代宇宙ステーション
現在2030年のISS運用終了を視野に、各国が開発または構想中の宇宙ステーションは以下になります。
中国宇宙ステーション (CSS)
最も先行しているのは中国です。
中国は、独自の宇宙ステーション「中国宇宙ステーション (CSS)」をスタートさせました。2021年4月に天和コアモジュールを打ち上げ、2022年には実験モジュール「問天」と「夢天」を打ち上げました。2022年11月から有人宇宙ロケット神舟15号が打ち上げられ、3人の宇宙飛行士が長期滞在を開始しました。まだまだ追加建設中で、2024年には巡天宇宙望遠鏡を打ち上げる予定です。
2023年には神舟15号を打ち上げ、3人の宇宙飛行士が長期滞在を開始しました。半年の入れ替わりを想定しているため、2024年4月も宇宙飛行士が入れ替わりで打ち上げられる予定です。
2023年12月から東京大学もこの宇宙ステーションで研究を始めるなど、国際連携も進めてるみたいです。
中国の宇宙ステーション構築の歴史
中国は1970年に人工衛星を打ち上げて宇宙開発を開始しました。その後、有人宇宙飛行計画を進め、2003年に楊利偉氏が中国初の宇宙飛行士となりました。宇宙ステーションの計画は、1990年代に始まりました。当初は「天宮」計画と呼ばれ、3つのモジュールで構成される宇宙ステーションの建設を目指していました。
天宮は、3つのモジュールで構成されています。
- 天和コアモジュール:居住区、作業区、実験区などを含む、ステーションの中心となるモジュールです。
- 問天実験モジュール:生命科学、微小重力科学、宇宙空間利用などの実験を行うモジュールです。
- 夢天実験モジュール:宇宙望遠鏡や宇宙プラットフォームなどの搭載を想定したモジュールです。
運用
2022年11月に完成した天宮は、現在、本格運用中です。主な運用内容は以下の通りです。
- 宇宙飛行士の長期滞在:3人の宇宙飛行士が6ヶ月間滞在し、科学実験や宇宙ステーションの運用を行います。
- 科学実験:生命科学、微小重力科学、宇宙空間利用など、様々な分野の科学実験が行われています。
- 宇宙技術の開発:宇宙ロボット技術、宇宙交差技術、宇宙再生利用技術などの開発が進められています。
今後の予定
宇宙飛行士の飛行予定は以下の通りです。
- 神舟16号:2024年4月頃打ち上げ予定
- 神舟17号:2024年10月頃打ち上げ予定
のように半年に一回は打ち上げを予定しています。
また今後2つのモジュールが追加される予定です。
- 巡天望遠鏡モジュール:太陽系や宇宙全体を観測する大型望遠鏡を搭載するモジュール
- 実験モジュール2:宇宙生物学、宇宙医学などの実験を行うモジュール
将来的に月探査や火星探査も計画しており、有人宇宙飛行技術の開発を加速させています!独自の宇宙ステーションを持つ、という観点では先行しているため米国も国家予算を増やすなど焦っている様子が伺えます。
米国・民間企業による宇宙ステーション
アメリカは民間企業が主導して宇宙ステーション・宇宙ホテルの開発に取り組んでいます。
Starlab Space
2024年1月31日に、2028年の打ち上げが決定しロケットはSpace Xが選定されました。最も進捗があるのはVoyager SpaceとAirbusのジョイントベンチャーStarlab Spaceが手がける商業宇宙ステーションStarlabです。
Starlabの特徴
Starlabは、以下の特徴を持っています。
- 民間企業主導: 民間企業の資金と技術を活用することで、建設・運用コストを削減。
- 拡張性: 将来的に拡張可能で、様々なニーズに対応。
- 科学研究: 微小重力環境での科学実験に特化。
- 商業利用: 宇宙旅行や宇宙製造など、商業利用にも対応。
Starlabがなぜ最も進捗しているのか
Starlabは、以下の利点を提供します。
- 宇宙開発コストの削減: 民間企業の参画により、政府負担を軽減。
- 宇宙開発の活性化: 民間企業の参画により、宇宙開発の競争促進。
- 宇宙へのアクセス拡大: 民間企業の参画により、より多くの人が宇宙へアクセス可能に。
- 科学研究の推進: 微小重力環境での科学実験を促進。
- 技術開発の促進: 宇宙旅行や宇宙製造など、新たな技術開発を促進。
米国は米国専用のステーション、というより各国の参加も視野に入れているかもしれません^^
なお他にもBlue Origin社のオービタルリーフがプロジェクトとしては進んでいましたが、予算の関係か一旦2023年にストップしている状況です。
ロシア
ロシアは独自の宇宙ステーション「ロシア軌道サービスステーション (ROSS)」を建設予定ですが現在稼働はストップしています。
インド
インドでも宇宙ステーションを建設する目標があるみたいです。
民間宇宙ホテル
Voyager Station
※現在執筆中です
まとめ
2024年現在、ISSと中国の宇宙ステーションが稼働しています。今後、米国、ロシア、インド、民間企業などが次世代宇宙ステーションや宇宙ホテルの建設を進めていく予定です。
参考資料
- 国際宇宙ステーション (ISS): https://www.nasa.gov/mission_pages/station/main/index.html
- ロシア軌道サービスステーション (ROSS): https://news.mynavi.jp/techplus/article/20220728-2410220/
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