バイオマス燃料とは?ロケット燃料としても注目されているのに普及しない理由

バイオマス燃料とは、生物由来の資源(バイオマス)を燃料として利用するものです。ゆえに温暖化が進み、二酸化炭素排出量が問題となっている近年で注目されている燃料です。

目次

バイオマス燃料が注目されている理由

バイオマス燃料が注目される理由はいくつもあります。

カーボンニュートラル

バイオマス燃料は、燃焼しても大気中の二酸化炭素量を増やさないカーボンニュートラルなエネルギー源です。燃焼時に発生する二酸化炭素が、植物の光合成によって吸収された二酸化炭素と同じ量だからです。

一方、化石燃料を燃焼すると、大気中に新たな二酸化炭素を排出するため、地球温暖化の原因となります。よってバイオマス燃料の利用は、化石燃料の使用量を減らし、二酸化炭素排出量削減に貢献することが期待されています。

再生可能エネルギー

バイオマス燃料は、植物由来の原料を使用するため、石油などの化石燃料と異なり、持続可能なエネルギーだとされています。バイオマス燃料の利用は、廃棄物処理の問題解決にも貢献することが期待されています。

バイオマス燃料は、食品残渣、農林業残渣、木材端材など、様々な廃棄物を利用して生産することができます。これらの廃棄物は、従来であれば焼却や埋め立て処分されていましたが、バイオマス燃料として利用することで、資源として有効活用することができます。

特に近年では、廃棄物処理に関する規制が強化されており、廃棄物削減やリサイクルが求められています。バイオマス燃料は、廃棄物を有効活用することで、廃棄物処理コストの削減にも貢献することができます。

国内生産可能

2022年には、ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、エネルギー価格が急騰し、世界的なエネルギー危機が発生しました。化石燃料は、主に中東やロシアなどの海外に依存しており、エネルギー価格の変動や供給不安などのリスクがあります。バイオマス燃料を積極的に利用することで、エネルギー自給率を高め、エネルギー安全保障を強化することができます。

またバイオマス燃料の生産や利用は、地域経済の活性化に貢献することができます。バイオマス燃料の生産には、農林業従事者や林業従事者などの労働力が必要となります。バイオマス燃料の製造プラントやバイオマス発電所などの建設も、地域経済に活性化をもたらします。

バイオマス燃料は、地域で生産・消費されるエネルギー源であるため、地域経済に大きなメリットをもたらすことが期待されています。政府も、バイオマス燃料の利用を促進することで、地方創生や地域活性化を図ることを目指しています。

バイオマス燃料の種類

バイオマス燃料の元となる素材は主に下記です。

  • 木質バイオマス: 木材チップ、木くず、ペレット、炭など
  • 農産物バイオマス: 稲わら、籾殻、トウモロコシストーク、バガスなど
  • 食品残渣: 果物くず、野菜くず、調理油など
  • 廃棄物バイオマス: 紙、プラスチック、繊維くずなど
  • 藻類バイオマス: 微細藻類、海藻など
  • エネルギー作物: トウモロコシ、サトウキビ、ヤシ、ユーカリなど

その上で、上記を活用し固形・液体・気体の燃料をそれぞれの使途に合わせて作られます。

固形バイオマス

木材チップ、木くず、ペレット、炭など、固体状のバイオマスを燃料として使用するものです。発電、熱供給、工業用燃料などに利用されます。

液体バイオマス

バイオエタノール、バイオディーゼル、バイオジェット燃料など、液体状のバイオマスを燃料として使用するものです。ガソリンや軽油の代替燃料として利用されます。

気体バイオマス

バイオガス、合成ガスなど、気体状のバイオマスを燃料として使用するものです。発電、熱供給、工業用燃料などに利用されます。

なぜもっと普及されないの?

一見地球に優しく、安価に見える材料から出来るバイオマス燃料はもっと普及されてもおかしくない燃料なのですが発電における構成比は2、3%と大部分を石炭・天然ガスに依存しています。理由はそれらのガスと比べて「高い」からです。

生産コストが高い

材料自体は安価に見えるのですが、実は収穫や搬送の観点でコストが高くなります。採掘だけの作業に比べて、バイオマス燃料は育成から始まるため時間もかかるのです。

  • 原料調達: バイオマス燃料の原料となる木材や農作物は、化石燃料と比べて収穫や搬送に手間がかかり、コストが高くなります。
    • 化石燃料は地下から採掘するだけですが、バイオマス燃料は植物を栽培・収穫する必要があります。
    • バイオマス燃料の原料は、広範囲から集める必要があるため、輸送コストも高くなります。
  • 加工・製造: バイオマス燃料を化石燃料と同等のエネルギーに変換するためには、複雑な加工や製造工程が必要となります。
    • バイオマス燃料は、種類によって必要な加工工程が異なりますが、一般的に化石燃料よりも多くのエネルギーと設備を必要とします。
    • 例えば、バイオエタノールを製造するには、トウモロコシを発酵させて蒸留する必要があります。
  • 技術開発: バイオマス燃料の生産技術は、まだ発展途上にあり、研究開発に多くのコストがかかっています。
    • 化石燃料の採掘・精製技術は、長年培われてきた技術であり、比較的安価に生産することができます。
    • バイオマス燃料の生産技術は、近年ようやく注目され始めた分野であり、更なる技術革新が必要とされています。

エネルギー密度が低い(転換効率が悪い)

生産コストも高いのですが、同じ量のエネルギーを得るために必要な燃料の差も「高価」になる原因です。

  • バイオマス燃料は、同じ体積で比較した場合、化石燃料よりもエネルギー密度が低くなります。
    • つまり、同じ量のエネルギーを得るためには、より多くのバイオマス燃料が必要となります。
    • バイオマス燃料は、水分や灰分が含まれているため、化石燃料よりもエネルギー密度が低くなります。
    • 例えば、1kgの石炭は約8,000kcalのエネルギーを産生しますが、1kgの木材は約4,000kcalしかエネルギーを産生しません。
  • そのため、輸送や保管にもコストがかかります。
    • バイオマス燃料は、化石燃料よりも嵩張るため、輸送や保管に多くのスペースが必要となります。
    • バイオマス燃料は、水分が含まれているため、腐敗や劣化しやすいという問題もあります。

同じ重さでも、半分のエネルギーしか生産できない…これも普及が進まない要因です。

今後の展望

それでもバイオマス燃料は日々研究が進められており、ロケットの燃料としても着目されています。

ロケットの燃料としても着目

2023年12月に堀江貴文氏がファウンダーのインターステラテクノロジズ社がバイオマス燃料の燃焼実験に成功しました。

 https://www.istellartech.com/news/press/8528

SpaceNews
JAXA selects Interstellar Technologies as priority launch provider Japan’s space agency has selected startup Interstellar Technologies as a priority launch provider as part of a program to advance the commercialization of space...

なお北海道大学は牛糞をバイオエタノールに効率的に転換する新技術を開発しました。この技術により、従来よりも低コストでバイオエタノールを生産することが可能になりました。2024年現在も国土交通省はバイオマス燃料の利用を促進するための補助金制度を設けています。

文献によると、牛糞をバイオエタノールに転換する費用は、1リットルあたり約100円~200円と見積されています。牛のゲップは大量のメタンを生成するともされているので、そんな牛を軸として再生エネルギーを作り出しカーボンニュートラルな状態を作れるのは楽しみですね。

もちろん、コストを下げる取り組みも進められています。「再生エネルギー」が注目される中、バイオマス燃料は国内での自給自足が可能です。今後の進展にも注目です!

参考資料:
GX実行会議 分野別投資戦略 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gx_jikkou_kaigi/dai10/siryou2.pdf 
GX実現に向けた基本方針 https://www.meti.go.jp/press/2022/02/20230210002/20230210002_3.pdf

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