文書の概要
NTN(Non-Terrestrial Networks、非地上系ネットワーク)は、3GPPが標準化する衛星やHAPSなど地上以外の通信基盤を利用したネットワークの総称です。
従来の地上の基地局では届かない場所(山間部、海上、離島、災害被災地など)で、既存のスマートフォンやIoT端末から直接衛星と通信できることが最大の特徴です。
対象範囲
NTNがカバーするプラットフォームは以下の4種類です。
| 種類 | 高度 | 特徴 |
|---|---|---|
| LEO(低軌道衛星) | 300〜1,500km | 遅延が小さいが高速で移動する。Starlink等 |
| MEO(中軌道衛星) | 7,000〜25,000km | LEOとGEOの中間的な性質 |
| GEO(静止軌道衛星) | 約36,000km | 広い範囲をカバーするが遅延が大きい |
| HAPS(成層圏基盤) | 約20km | 成層圏の無人航空機。NTTドコモ・ソフトバンクが注力 |
リリースごとの仕様
| リリース | 時期 | 主な内容 |
|---|---|---|
| Release 15 | 2018年 | 調査段階。TR 38.811でNTNのチャネルモデルと展開の想定を文書化 |
| Release 17 | 2022年 | NTN初の正式仕様化。 NR NTN(携帯端末対応)とIoT NTN(NB-IoT/eMTC)を導入 |
| Release 18 | 2024年 | 10GHz以上の周波数帯対応、移動中の接続改善、衛星TDD帯域の導入 |
| Release 19 | 2025年末予定 | 衛星上での処理(再生型)、蓄積転送機能、省電力端末(RedCap)対応 |
主な仕様文書
| 文書番号 | 内容 |
|---|---|
| TR 38.811 | NTNのチャネルモデルと展開の想定(Release 15、調査段階) |
| TR 38.821 | NR NTNの技術方式の調査 |
| TS 38.101-5 | NTN向け新周波数帯(n255: L帯、n256: S帯)の無線要件 |
| TS 23.501 | 5Gシステム構成(NTN拡張を含む) |
想定されている利用場面
- スマートフォンからの直接通信: 既存の端末で衛星経由のメッセージ・音声・データ通信
- 緊急時・災害時の通信手段: 地上の基地局が被災した際の代替通信
- 遠隔地のIoT接続: 農業・輸送・海運など、基地局のない場所でのデータ収集
- 海上・航空機内での通信: 地上基地局が存在しない場所でのネット接続
- 過疎地での通信: 人口の少ない地域への通信サービスの提供
日本の通信各社の動き
| 事業者 | 取り組み |
|---|---|
| KDDI(au) | 2025年4月に「au Starlink Direct」を開始。7月に利用者100万人を超えた。Starlinkの衛星を使った端末直接通信 |
| 楽天モバイル | AST SpaceMobileと提携。2025年4月に日本初の低軌道衛星-市販スマホ間のビデオ通話に成功。2026年末に「Rakuten最強衛星サービス」開始予定(面積カバー率100%を目標) |
| NTTドコモ | HAPS事業を2026年から始める予定。2027年以降に独自の観測衛星も計画 |
| ソフトバンク | 2026年内にHAPSの試験的な商用運用を開始。同年に衛星-スマホ直接通信も開始予定 |
対応チップの状況
| 開発元 | チップ名 | NTN対応の内容 |
|---|---|---|
| Qualcomm | Snapdragon X80 | NB-NTN衛星通信を統合した初の5G通信チップ |
| Qualcomm | Snapdragon W5+ Gen 2 | ウェアラブル端末で初のNB-NTN衛星対応 |
| MediaTek | Dimensity 8400 | 中価格帯のスマホ向けに衛星経由の双方向通話・メッセージ対応を統合 |
関連する文書やその後の作業
- Release 20(2027年頃)ではNTNのさらなる高速化と、地上網との連携強化が予定されている
- ITU(国際電気通信連合)のWRC-23で、NTN向け周波数帯の追加割り当てが議論された
参考とした資料