Golden Domeの全体像
「Golden Dome for America」(ゴールデン・ドーム・フォー・アメリカ)は、トランプ大統領が2025年1月27日の大統領令で指示し、同年5月20日に正式発表した米国の宇宙ミサイル防衛構想。弾道ミサイル、極超音速兵器、巡航ミサイル、AI搭載ドローン群など、あらゆる経空脅威から米本土を守ることを目的としている。
当初は「Iron Dome for America」(アメリカ版アイアンドーム)と称されていたが、後にGolden Domeに改称された(NPR)。
技術的な構成
Golden Domeの中核は、低軌道(LEO)に配備される数千基の衛星コンステレーション。センサーと迎撃体を搭載した衛星により、多層構造で脅威を迎撃する(CSIS)。
防衛の3段階
| 段階 | 方法 | 配備場所 |
|---|---|---|
| ブーストフェーズ(発射直後) | 宇宙配備型迎撃体・指向性エネルギー兵器(レーザー) | 宇宙(LEO) |
| ミッドコースフェーズ(飛行中) | 次世代迎撃体(NGI)、宇宙配備型迎撃体 | 宇宙・地上 |
| ターミナルフェーズ(着弾直前) | THAAD、地上配備型迎撃体 | 地上 |
衛星コンステレーション
宇宙開発庁(SDA)が構築する「拡散型戦闘空間アーキテクチャ」(PWSA)がGolden Domeのセンシング基盤となる。2025年12月にミサイル追跡衛星72基の建造契約(約35億ドル)を4社に授与した(SpaceNews)。
レーザー兵器
500キロワット級の連続波レーザーが開発中で、ブーストフェーズでのICBM・極超音速兵器の迎撃を想定。議会は指向性エネルギー能力の開発に2.5億ドルを計上した。
予算
| 見積主体 | 金額 |
|---|---|
| ホワイトハウス | 1,750億ドル(約25兆円) |
| 議会予算局(CBO) | 1,610億〜5,420億ドル(20年間) |
| CBO別推計(上限) | 8,310億ドル |
| アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI) | 3.6兆ドル |
議会が2025年に承認した予算は約244億ドル。内訳は軍事宇宙センサー開発72億ドル、宇宙配備型迎撃能力56億ドル、指向性エネルギー2.5億ドルなど(Bloomberg)。
トランプ大統領は3年以内(2028年頃まで)の完成を主張しているが、CBOの推計は20年間を前提としている。
SDI(スターウォーズ計画)との比較
| 項目 | SDI(1983年、レーガン政権) | Golden Dome(2025年、トランプ政権) |
|---|---|---|
| 予算見積 | 600〜1,000億ドル | 1,750億ドル |
| 技術アプローチ | 未存在技術に依存 | 既存技術の活用を基本方針 |
| 対象脅威 | 核弾道ミサイル(主にソ連) | 弾道ミサイル・極超音速兵器・巡航ミサイル・ドローン群 |
| 結末 | 1993年に終了 | 進行中 |
SDIの研究成果は現行のイージスBMD、THAAD、GMDに引き継がれた。Golden Domeは「新技術の開発ではなく既存技術をベースに構築する」点がSDIとの違いとされる(Space Force Association)。
関連企業
宇宙配備型迎撃体(SBI)プロトタイプ契約(2025年11月)
| 企業 | 備考 |
|---|---|
| Lockheed Martin | 2028年までに軌道上試験を計画 |
| Northrop Grumman | — |
| Anduril Industries | 防衛テックのユニコーン企業 |
| True Anomaly | — |
出典: Air & Space Forces Magazine
ミサイル追跡衛星72基の建造契約(2025年12月、約35億ドル)
| 企業 | 基数 |
|---|---|
| L3Harris Technologies | 18基 |
| Lockheed Martin | 18基(約11億ドル) |
| Rocket Lab USA | 18基 |
| Northrop Grumman | 18基 |
SpaceXの関与
SpaceXは600基の衛星コンステレーション構築で20億ドルのペンタゴン契約を受注予定と報道されている。2026年2月にはSpaceXとBlue OriginがGolden Dome推進に伴い優先事項を急転換したと報じられた(Defense News)。
SHIELD契約
ミサイル防衛庁が設定した最大1,510億ドル規模の契約車両に、2,000社以上が参加可能(Defense One)。
国際的な反応
中国・ロシア
ロシアはGolden Domeを「宇宙空間を軍事的対立の場に変える」と批判。中国は宇宙条約への違反と軍拡競争のリスクを主張した。2025年5月8日、習近平国家主席とプーチン大統領はGolden Dome構想を「世界の戦略的安定維持の原則の拒否」と特徴づける共同声明を発出した(CSIS)。
日本の参加表明
日本政府はGolden Domeへの参加意向を表明。高市首相が日米首脳会談でトランプ大統領に直接伝達した。連携分野は迎撃ミサイルの共同開発・共同生産、および脅威探知・追尾用衛星網の構築とされている(日本経済新聞、笹川平和財団)。
宇宙産業への影響
Golden Domeは宇宙産業にとって大規模な契約機会をもたらしている。2025〜2026年に合計で370億ドル以上の予算が宇宙・ミサイル防衛システムに投入された。
打ち上げインフラの拡充と打ち上げコストの低下は、間接的に商業宇宙や宇宙旅行にも影響する。CBOの推計では、SpaceX Starshipのような重量物打ち上げロケットの実用化により、宇宙配備型防衛システムの総コスト見積が過去20年間で8,310億ドルから約5,420億ドルに減少した(SpaceNews)。
一方で、宇宙の軍事化が進むことで商業宇宙活動に対する規制環境が変化する可能性も指摘されている。
参考とした資料
- Golden Dome (missile defense system) — Wikipedia
- America’s ‘Golden Dome’ Explained — CSIS
- Trump unveils ‘Golden Dome’ missile defense — NPR
- トランプ氏、ミサイル防衛構想「ゴールデン・ドーム」に3年で25兆円 — 日本経済新聞
- 米本土ミサイル防衛「ゴールデン・ドーム」構想の全体像と含意 — 笹川平和財団
- SDA awards $3.5 billion for missile-tracking satellites — SpaceNews
- Golden Dome directed energy — Leonardo DRS
- SpaceX and Blue Origin shift priorities amid Golden Dome push — Defense News