事業の概要
防衛省の「衛星コンステレーションの整備・運営等事業」は、低軌道(LEO)に多数の小型衛星を配置し、他国の艦艇やミサイル発射装置などの動向を常時監視するシステムを構築する計画。スタンド・オフ防衛能力の実効性確保に必要な目標の探知・追尾能力の獲得を目的としている(防衛省)。
PFI方式(BOO方式: Build-Own-Operate)を採用しており、民間企業が衛星を所有・運営し、防衛省が優先的にサービスを利用する形態をとる。Xバンド防衛通信衛星「きらめき」でも同様のPFI方式が用いられた前例がある。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 契約金額 | 総額2,831億円(税込) |
| 事業期間 | 2026年2月19日〜2031年3月31日 |
| 方式 | PFI(BOO方式) |
| 衛星の種類 | SAR(合成開口レーダー)衛星+光学衛星 |
| 軌道 | 低軌道(高度約2,000km以下) |
トライサット・コンステレーション
会社概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 株式会社トライサット・コンステレーション(Tri-Sat Constellation Co., Ltd.) |
| 設立日 | 2026年1月26日 |
| 法的性格 | 特別目的会社(SPC)— PFI事業のために設立 |
| 契約締結日 | 2026年2月19日 |
株主構成
| 企業 | 出資比率 | 役割 |
|---|---|---|
| 三菱電機 | 45% | 代表企業、衛星製造 |
| スカパーJSAT | 45% | 衛星運用・通信 |
| 三井物産 | 10% | 事業統括・調達 |
「トライサット」の名称は出資3社(Tri=3)と衛星(Satellite)に由来する(三菱電機プレスリリース)。
事業内容
- 防衛省向け衛星コンステレーションの画像データ取得
- 専用地上施設の運用
- 全般管理
参画企業7社と技術分担
| 企業 | 担当領域 |
|---|---|
| 三菱電機 | 代表企業、衛星システム全般 |
| スカパーJSAT | 衛星運用・通信インフラ |
| 三井物産 | 事業統括・調達 |
| Synspective | SAR(合成開口レーダー)衛星の製造 |
| QPS研究所 | SAR衛星の製造 |
| アクセルスペース | 光学衛星の製造 |
| 三井物産エアロスペース | 事業支援 |
Synspective、QPS研究所、アクセルスペースはいずれも日本の宇宙スタートアップ。防衛省の大型事業にスタートアップが参画する点が注目されている(宙畑)。
米国SDAとの類似性
米国宇宙開発庁(SDA)が構築する「PWSA(Proliferated Warfighter Space Architecture)」は、低軌道に多数の衛星を配置してミサイル発射の早期警報や追尾情報を伝達するシステムで、防衛省のコンステレーション計画と構想が類似している。
| 項目 | 米国SDA/PWSA | 防衛省コンステレーション |
|---|---|---|
| 衛星数 | 数百基規模 | 非公表 |
| 軌道 | LEO | LEO |
| 主な機能 | ミサイル追跡・通信 | 画像データ取得(SAR+光学) |
| 方式 | 政府調達 | PFI(民間所有・運営) |
| 予算 | Tranche 3で約35億ドル | 2,831億円 |
防衛省はHGV(極超音速滑空兵器)探知・追尾用の赤外線センサー搭載衛星の実証も別途進めており、将来的にSDAのミサイル追尾レイヤーに相当する能力の獲得を目指している(防衛省 宇宙安全保障に係る取組)。
安全保障3文書と宇宙の位置づけ
2022年12月に閣議決定された「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」(安保3文書)において、宇宙は重点分野として位置づけられた。
- 2027年度までに航空自衛隊を「航空宇宙自衛隊」に改称
- 防衛力整備計画期間中の宇宙関連予算として約1兆円を計上
- 2025年度の宇宙関連予算は約5,974億円(概算要求ベース、政府全体の宇宙予算の6割以上)
経緯
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2008年 | 宇宙基本法制定。防衛目的の宇宙利用が法的に可能に |
| 2017〜2018年 | Xバンド防衛通信衛星「きらめき」1号・2号打上げ(PFI方式の先例) |
| 2020年5月 | 宇宙作戦隊を航空自衛隊府中基地に新編 |
| 2022年3月 | 宇宙作戦群を新編(宇宙作戦隊を改編・拡充) |
| 2022年12月 | 安保3文書を閣議決定。宇宙関連予算約1兆円を計画 |
| 2024年11月 | 「きらめき3号」打上げ成功。防衛通信衛星3基態勢が完成 |
| 2025年7月4日 | 衛星コンステレーション事業をPFI特定事業に選定 |
| 2025年7月8日 | 民間事業者の公募開始 |
| 2025年12月24日 | 三菱電機を代表とするグループが落札者に決定 |
| 2026年1月26日 | トライサット・コンステレーション設立 |
| 2026年2月19日 | 防衛省とトライサットが事業契約を締結(2,831億円) |
| 2027〜2028年度 | 本格運用開始予定 |
| 2031年3月31日 | 事業契約期間の終了 |
参考とした資料