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日本の宇宙予算詳細内訳2026 — 総額5,000億円超の使い道


日本の宇宙予算は過去最大規模に

2026年度(令和8年度)の日本の宇宙関連予算は、政府全体で約5,200億円に達し、過去最大を更新した。2020年度の約3,500億円と比較して約50%の増加であり、宇宙安全保障の強化が最大の要因である。

宇宙基本計画(2023年改定)で掲げられた「10年間で1兆円の官民投資」の達成に向け、政府は着実に予算を積み増している。


省庁別の宇宙関連予算

省庁2026年度予算(億円)前年度比主な事業
文部科学省(JAXA)2,100+8%H3/イプシロンS、ISS/Gateway、はやぶさ2拡張、SLIM後継
防衛省1,400+25%宇宙状況監視、衛星通信、GPS代替測位、ミサイル防衛
内閣府650+12%準天頂衛星みちびき、宇宙政策委員会、SBIR
総務省350+10%光通信技術、Beyond 5G/6G衛星統合
経済産業省280+15%衛星データ利活用、宇宙スタートアップ支援
国土交通省200+5%測量衛星、防災衛星データ
環境省120+10%GOSAT温室効果ガス監視衛星
農林水産省60+8%衛星データによるスマート農業
その他40外務省(宇宙外交)、気象庁(ひまわり後継)等
合計約5,200+14%

分野別の詳細分析

1. ロケット開発(約800億円)

H3ロケット: 三菱重工との官民連携で年間6回の打ち上げ体制を確立中。2026年度は4回の打ち上げを計画。量産効果で1回あたり約50億円の達成を目指す。

イプシロンSロケット: IHIエアロスペースが開発する固体燃料ロケットの改良型。小型衛星の機動的な打ち上げ需要に対応。

再使用型ロケット研究: JAXA/ISASのCALLISTO計画を発展させた再使用型基幹ロケットの基礎研究に約50億円を計上。2030年代の実用化を目標。

2. 宇宙安全保障(約1,400億円)

防衛省の宇宙関連予算は前年度比25%増と最も伸び率が高い。

宇宙状況監視(SSA): JAXAの光学望遠鏡とレーダーに加え、防衛省独自のSSAシステムを構築。米宇宙軍との情報共有体制を強化。

衛星通信の抗堪性強化: 既存の防衛通信衛星(Xバンド)に加え、LEO衛星通信の活用を検討。有事における通信の冗長性確保が目的。

GPS代替/補完: 準天頂衛星みちびきの7機体制への移行と、GPS妨害に対する代替測位技術の開発。

ミサイル防衛: 衛星を活用した早期警戒・追跡能力の強化。HGV(極超音速滑空体)への対処として、LEO衛星による常時監視体制を構築。

3. 科学探査(約500億円)

火星衛星探査(MMX): 2026年度打ち上げ予定の火星衛星フォボスサンプルリターン計画。プロジェクト総額約500億円のうち、2026年度は打ち上げ・運用費を計上。

月探査: SLIM(成功)の後継として、月極域の水氷探査計画に着手。インドISROとの共同計画LUPEX(Lunar Polar Exploration)が進行中。

はやぶさ2拡張ミッション: 小惑星リュウグウからのサンプル分析継続と、拡張ミッションでの小惑星2001 CC21フライバイに向けた運用。

4. 衛星データ利活用(約400億円)

Tellus(テルース): 経産省が推進する衛星データプラットフォーム。自治体・企業向けにデータ提供・分析ツールを無償提供。利用者は3万人を超えた。

防災: だいち4号(ALOS-4)のSAR(合成開口レーダー)データを活用した災害監視。能登半島地震での活用実績を踏まえ、リアルタイム性を強化。

スマート農業: 衛星画像による農地モニタリング、生育状況把握、収量予測の社会実装を推進。

5. 準天頂衛星みちびき(約650億円)

2025年度に5号機・6号機を打ち上げ、2026年度には7号機の製造に着手。7機体制の完成により、日本上空に常時4機以上の衛星を配置し、GPS非依存の高精度測位を実現。

自動運転、農機自動化、ドローン物流などの社会実装に不可欠なインフラとして位置づけられている。


国際比較 — 日本の宇宙予算は十分か

宇宙予算(2025年)GDP比備考
米国約620億ドル0.22%NASA+DoD+NRO
中国約140億ドル(推定)0.08%非公開、推定値
欧州(ESA+各国)約80億ユーロ0.04%ESA加盟国合計
日本約35億ドル0.08%全省庁合計
インド約20億ドル0.06%ISRO中心

GDP比で見ると日本は0.08%で、米国の0.22%には及ばないものの、中国と同水準にある。ただし絶対額では米国の約18分の1、中国の約4分の1であり、選択と集中が求められる。


今後の課題

  1. 防衛宇宙と民生宇宙の連携: デュアルユース技術の活用促進。米国のように防衛需要が民間技術の発展を牽引する仕組みの構築
  2. 宇宙産業の自律性: H3ロケットの国際競争力強化。Falcon 9との価格差を縮小するための量産化・再使用化
  3. 人材育成: 宇宙工学専攻の大学院生への支援拡充。JAXAの処遇改善による人材流出防止
  4. スタートアップ支援: SBIR(中小企業技術革新制度)の宇宙分野への配分拡大。ispace、Synspective、AstroscaleなどへのFollow-on投資

まとめ

日本の宇宙予算は着実に増加しており、特に防衛宇宙と準天頂衛星への投資が成長を牽引している。5,200億円という規模は過去最大だが、米中との格差を考えると、民間投資の呼び込みと国際連携がますます重要になる。

宇宙基本計画で掲げた「2030年代初頭に宇宙産業の市場規模を倍増」の目標達成に向け、政府予算と民間投資の好循環を生み出せるかが鍵だ。


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