概要
宇宙戦略基金は、JAXAに設置された日本最大規模の宇宙産業支援基金です。2023年11月の閣議決定「デフレ完全脱却のための総合経済対策」に基づき、JAXA法改正を経て制度化されました。
民間企業・大学等が最大10年間にわたって宇宙分野の先端技術開発・技術実証・商業化に取り組めるよう、10年間で1兆円規模の支援を行います。内閣府主導で4府省(内閣府・総務省・文部科学省・経済産業省)が連携して運営しています。
目的
日本の宇宙産業は現在約4兆円規模(世界シェア約4%)ですが、政府は2030年代初頭に8兆円への倍増を目標に掲げています。宇宙戦略基金はこの目標達成の中核施策として、以下の課題に対応します。
- 宇宙輸送コストの低減と打上げ頻度の向上
- 商業衛星コンステレーションの国際競争力強化
- 月面・深宇宙探査の技術基盤構築
- 宇宙産業のサプライチェーン強化
対象分野
3つの大分野で技術開発テーマが設定されています。
| 大分野 | 主な領域 |
|---|---|
| 宇宙輸送 | ロケット軽量化・コスト低減、高頻度打上げ、再使用型輸送機、スマート射場 |
| 衛星等 | 商業衛星コンステレーション、通信ペイロード、光通信、地球観測高度化 |
| 探査等 | 月極域着陸技術、軌道上データセンター、有人宇宙輸送の安全確保 |
スキーム(仕組み)
第一期(令和5年度補正予算): 3,000億円
| 省庁 | 予算額 | 採択テーマ数 | 採択件数 | 採択額 |
|---|---|---|---|---|
| 総務省 | 240億円 | 4テーマ | 5件 | 225億円 |
| 文部科学省 | 1,500億円 | 13テーマ | 24件 | 1,394億円 |
| 経済産業省 | 1,260億円 | 5テーマ | 23件 | 1,082億円 |
| 合計 | 3,000億円 | 22テーマ | 52件 | 2,701億円 |
全130件・247社の応募に対し、52件が採択されました(採択率約40%)。
第二期(令和6年度補正予算): 約3,000億円
| 省庁 | 予算額 | テーマ数 |
|---|---|---|
| 総務省 | 450億円 | 5テーマ |
| 文部科学省 | 1,550億円 | 13テーマ |
| 経済産業省 | 1,000億円 | 6テーマ |
| 合計 | 約3,000億円 | 24テーマ |
第二期の注目テーマと支援規模:
- 空間自在移動の実現に向けた技術: 300億円(最大規模)
- 月極域における高精度着陸技術: 200億円
- 空間自在利用の実現に向けた技術: 165億円
- 軌道上データセンター構築技術: 135億円
- 有人宇宙輸送システムにおける安全確保の基盤技術: 100億円
採択企業の具体例(第一期)
- 三菱重工業: WAAM(ワイヤアーク積層造形)を用いた大型極低温推進薬タンクの製造技術
- ニコン: 宇宙輸送機の軽量・高性能化技術
- 清水建設: 宇宙輸送機関連技術
- 日本郵船: 再使用型ロケットの洋上回収技術開発(海運会社として初の採択)
KPI・成果目標
- 主要KPI: 2030年代初頭までに国内民間企業等による低軌道利用ビジネスを10件以上創出
- 評価指標(EBPM: Evidence Based Policy Making):
- 国際競争力の向上度
- 事業実施状況
- 民間投資の誘発額
- 各府省庁がJAXAと協議して定める個別指標
スケジュール
| 時期 | イベント |
|---|---|
| 2023年11月 | 閣議決定、JAXA法改正 |
| 2024年4月 | 基本方針・実施方針決定、第一期22テーマ発表 |
| 2024年7月〜 | 第一期の公募開始(順次) |
| 2025年1〜2月 | 第一期の全採択結果発表(52件) |
| 2025年3月 | 基本方針改定、第二期24テーマ発表 |
| 2025年5〜9月 | 第二期の公募開始(順次) |
| 2026年2月 | 第二期の採択結果発表(順次) |
| 2026年2月25日 | 基本方針の最新改定版公表 |
| 今後 | 第三期(残り約4,000億円)は令和7年度以降の補正予算で措置予定 |
関連政策
宇宙戦略基金は、日本の宇宙産業支援の4本柱の中核に位置づけられています。
| プログラム | 概要 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 宇宙戦略基金 | 10年1兆円、技術開発〜商業化支援 | 中核的な大規模基金 |
| SBIR制度 | 中小企業・スタートアップ向け技術開発 | 初期段階の技術シーズ育成 |
| Stardust Program | 宇宙開発利用の加速化 | 実用化・利用拡大フェーズ |
| K Program | 経済安全保障上の重要技術育成 | 安全保障関連技術 |
また、J-SPARC(JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ)は民間企業やスタートアップとの共創活動を行うプラットフォームで、ここで育成された技術が宇宙戦略基金やSBIR等へ接続される橋渡し機能を果たしています。
公式リンク