光学衛星画像とは
光学衛星画像は、地球の表面を可視光線や近赤外線で撮影した画像だ。私たちが日常的に見るGoogle Mapsの衛星写真も、光学衛星から取得されたものである。
光学衛星は太陽光が地表で反射した光をセンサーで受信する受動型センサーだ。人間の目と同じ原理だが、可視光だけでなく近赤外線や短波赤外線も捉えることで、肉眼では見えない情報を取得できる。
解像度の3つの指標
光学衛星画像の性能を理解するには、3つの解像度を知る必要がある。
空間分解能
1ピクセルが地上の何メートルに相当するかを示す。数値が小さいほど高精細だ。
- 超高分解能(30cm以下): Maxar WorldView Legion、Pléiades Neo — 車の種類まで識別可能
- 高分解能(30cm〜1m): SkySat(Planet) — 建物の形状を識別可能
- 中分解能(1m〜30m): Sentinel-2、Landsat — 農地や都市の広域把握
- 低分解能(30m以上): MODIS — 大気・海洋の大規模監視
時間分解能(再訪頻度)
同一地点を何日おきに撮影できるかを示す。Planet社のDoveコンステレーション(200機以上)は、地球全体を毎日撮影できる。一方、高分解能衛星は数が少ないため、特定地点の再訪は数日〜数週間かかる場合がある。
スペクトル分解能
何種類の波長帯(バンド)でデータを取得できるかを示す。バンド数が多いほど、地表の物質を詳細に識別できる。
- パンクロマティック(1バンド): 白黒画像。最高の空間分解能を実現
- マルチスペクトル(4〜12バンド): RGB + 近赤外線など。植生・水域の識別に有効
- ハイパースペクトル(100バンド以上): 鉱物・化学物質の同定が可能。PRISMA(イタリア)やEnMAP(ドイツ)が運用中
主要な光学衛星・企業
Maxar Technologies(米国)
WorldView-3/4/Legionシリーズを運用。商業光学衛星で世界最高の30cm分解能を提供する。米国政府の主要な画像インテリジェンスサプライヤーでもある。
Planet Labs(米国)
200機以上のDove衛星で地球全体を毎日撮影する唯一の企業。3m分解能の「PlanetScope」と、50cm分解能の「SkySat」を運用する。2024年にはTanagerハイパースペクトル衛星も打ち上げた。
Airbus Defence and Space(欧州)
Pléiades/Pléiades Neoシリーズを運用。30cm分解能の高精細画像を提供する。SPOTシリーズで30年以上の地球観測実績を持つ。
Sentinel-2(ESA / Copernicus)
10m分解能の13バンドマルチスペクトルデータを無料公開している。5日ごとの再訪頻度で、農業・森林・水資源のモニタリングに広く利用されている。
Landsat(NASA / USGS)
1972年から50年以上にわたり地球を観測し続ける最古の地球観測プログラム。30m分解能のデータが無料で利用可能で、長期的な環境変化の分析に不可欠だ。
光学衛星画像の活用事例
農業
NDVI(正規化植生指数)を用いて作物の生育状況を把握する。近赤外線バンドと赤バンドの反射率の差から算出され、値が高いほど植物が健全であることを示す。精密農業では、圃場内の生育ムラを検出して施肥量を最適化する。
都市計画・土地利用
都市の拡大、緑地の減少、不法建築の検出などに衛星画像が活用される。経年変化を比較することで、都市化の進行を定量的に把握できる。
環境・森林監視
森林伐採の検出、サンゴ礁の健康状態、水質の変化など、広域の環境モニタリングに不可欠だ。ブラジルのアマゾン熱帯雨林の違法伐採監視では、Sentinel-2とPlanetのデータが日常的に活用されている。
災害対応
地震・洪水・山火事の被害範囲の把握に利用される。ただし光学画像は雲に遮られるという弱点があり、災害時にはSARとの併用が推奨される。
金融・経済分析
小売店の駐車場の車両数から売上を推定する、原油タンクの影から在庫量を推定するなど、衛星画像を経済指標として活用する「代替データ」ビジネスが成長している。
光学画像とSARの使い分け
光学画像とSARはそれぞれ得意分野が異なる。
- 晴天時の高精細画像: 光学が優位
- 夜間・悪天候: SARが優位
- 植生・水質の分析: 光学のマルチスペクトルが有効
- 地盤変動の検出: SARのInSARが有効
- 船舶検出: SARが優位(金属の反射が強い)
最先端の地球観測企業は、光学とSARの**フュージョン(融合)**を進めている。両方のデータを組み合わせることで、観測頻度と情報量を最大化する。
まとめ
光学衛星画像は、地球観測の最も基本的かつ強力なツールだ。分解能・再訪頻度・スペクトル帯域の3軸で用途に応じた衛星を選択し、SARとの併用で弱点を補完するのが現代のベストプラクティスである。
あわせて読みたい
- 高解像度衛星画像の選び方 — 光学・SAR・解像度・価格を徹底比較
- 衛星データ入門ガイド 2026年版 — 種類・解像度・主要衛星・無料ツール・学習リソースを完全解説
- 衛星データの価格ガイド — 無料データから商用ライセンスまで、用途別のコストと入手方法
参考としたサイト
- Planet Labs — 毎日全地球を撮影する衛星コンステレーション企業
- Maxar Technologies — 高解像度光学衛星画像の最大手プロバイダー
- ESA Sentinel-2 User Guide — Sentinel-2マルチスペクトル撮像装置のガイド
- USGS Landsat Missions — 米国地質調査所のLandsat衛星データ
- Copernicus Open Access Hub — EUの無料衛星データダウンロードサイト