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宇宙産業 2026年Q1サマリー — 打ち上げ・資金調達・政策・M&Aの全体像


はじめに

2026年第1四半期(1〜3月)は、SpaceXとxAIの合併、NASA予算の大幅削減、宇宙戦略基金第3期の発表、そしてStarship V3の初静的燃焼試験など、宇宙産業の構造変化を象徴するイベントが続いた。

本記事では、打ち上げ実績・資金調達・政策動向・M&A/IPO・技術マイルストーンの5つの軸で2026年Q1を振り返り、Q2の見通しを整理する。

打ち上げ実績

SpaceX — Q1で33回、年間ペース130回超

Falcon 9は2026年3月17日時点で33回の打ち上げを完了。年間ペースでは130回超となり、2025年の165回を上回る勢い。主な実績は以下の通り。

時期ミッション備考
1月Starlink Group各種累計打ち上げが600回目のFalcon 9飛行を達成
2月Crew-12ISS有人輸送。ISSへのドッキング成功
1〜3月Starlink Group 多数衛星総数が10,020機超に到達

Starshipは、Flight 12がV3(Block 3)初号機として準備中。2026年3月にBooster 19(Raptor 3エンジン搭載)の初静的燃焼試験をPad 2で実施したが、数秒で終了し何らかの課題が示唆された。Flight 12の打ち上げは2026年4月以降の見通し。V3は低軌道への投入能力が100トン超(V2の約3倍)となる。

出典: SpaceXNow — Statistics / Space.com — Starship V3 Static Fire / NASASpaceFlight — Ship 39 Preflight

H3ロケット — 9号機は延期

H3ロケット9号機は準天頂衛星「みちびき7号機」を搭載し2026年2月1日に打ち上げ予定だったが、8号機の打上げ失敗に関する原因究明と後続号機への影響評価のため、2026年1月7日にJAXAと三菱重工が延期を発表。Q1中の打ち上げは実現しなかった。

H3は2024年以降4機連続で成功を収めていたが、8号機の失敗で一時的な中断を余儀なくされた。

出典: JAXA — H3ロケット9号機打上げ延期 / 日本経済新聞 — H3ロケット9号機

Rocket Lab — Neutron初飛行はQ4に

Electronは2025年に21回連続成功を達成し、2026年Q1も打ち上げを継続。しかし次世代中型ロケットNeutronは、Stage 1タンクの水圧試験で破裂が発生し、初飛行がQ4 2026に延期された。2025年Q4決算発表(2月)でスケジュール更新を公表。Rocket Lab株はNeutronの進捗とSpaceX IPO期待から6%上昇する場面もあった。

出典: Rocket Lab — Neutron Test Update(2026年1月) / 247 Wall St — Rocket Lab Jumps 6%

中国 — 長征シリーズで多様なミッション

日付ロケットミッション備考
1月19日長征12号低軌道インターネット衛星(第19群)海南商業発射場から
2月上旬長征2F再利用型実験宇宙船酒泉衛星発射センター
3月13日長征8A低軌道インターネット衛星(第20群)新型ロケット。海南から
3月15日長征6号改遥感50号02衛星太原衛星発射センター

中国は再利用型ロケットの開発を加速しており、長征10号派生型の再利用ロケット初飛行を2026年前半に予定。5メートル径の液体推進ロケットで、SpaceXのFalcon 9に対抗する構え。

出典: 新華社 — 長征8Aインターネット衛星 / SpaceNews — 中国再利用ロケット / CGTN — 再利用実験宇宙船

資金調達

2026年は開始早々から大型ラウンドが相次ぎ、Q1だけで20億ドル超の資金調達が報告されている。

主要ラウンド

企業ラウンド金額リード投資家備考
Sierra SpaceSeries C$550MLuminArx Capital累計$2B、バリュエーション$8B。国防宇宙に注力
VastSeries A + Debt$500MBalerion Space Ventures$300Mエクイティ + $200Mデット。Haven-1商業宇宙ステーション
その他多数Crunchbaseによると宇宙テック全体で$2B超

Sierra Spaceは累計調達額が20億ドルに達し、バリュエーション80億ドル。国防宇宙向けの生産能力拡大に資金を充てる。Vastは商業宇宙ステーション「Haven-1」の開発を加速しており、ISS退役後の後継候補として注目されている。投資家にはカタール投資庁、三井物産、MUFG、ニコンなど日本勢も名を連ねる。

MIT Technology Reviewは「商業宇宙ステーション」を2026年の10大ブレークスルー技術に選出している。

出典: Via Satellite — Vast and Sierra Space Funding / CNBC — Vast $500M / Crunchbase — Space Tech Funding / MIT Technology Review — 10 Breakthrough Technologies 2026

政策動向

NASA — 予算24%削減、ただし議会が一部補填

ホワイトハウスのFY2026予算案はNASA予算を約24%削減する内容。ハッブル宇宙望遠鏡の予算は$93.3M→$85.0M、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は$187M→$140Mに減額された。一方、議会が可決した「One Big Beautiful Bill Act」は2032年までに約100億ドルを月・火星ミッションに追加配分する内容で、一定の下支えとなっている。

出典: NASA — FY2026 Budget Request / AAS — FY26 Budget Details

Golden Dome — 予算$185Bに拡大

トランプ大統領が2025年5月に正式発表した宇宙ミサイル防衛構想「Golden Dome」の予算見積もりは、当初の$175Bから**$185Bに増額された。宇宙配備型の追加能力調達が要因。FY2026のSpace Force予算は$26.3Bで、議会の「One Big Beautiful Bill」による$21.6Bと合わせると、FY2025比で約40%増**となる。

議会はGolden Domeの予算透明性を求めており、SDA(宇宙開発庁)のTranche 3も復活予算が計上された。

出典: DefenseScoop — Golden Dome $185B / Aerospace Corp — FY2026 Defense Space Budget / SatNews — FY26 Defense Bill

日本 — 宇宙戦略基金 第3期(2,000億円・19テーマ)

2026年2月25日、内閣府・総務省・文部科学省・経済産業省が宇宙戦略基金の第3期実施方針を発表。令和7年度補正予算から2,000億円・19テーマが措置された。

省庁配分額主なテーマ
総務省310億円衛星通信、地上ネットワーク統合
文部科学省計上あり輸送、探査、観測
経済産業省740億円民間ロケット打ち上げ実証加速、異分野融合

第3期は「実証・事業化の加速」をテーマに掲げ、第2期までの研究開発段階から実運用フェーズへの移行を促す構成。10年間で総額1兆円規模の投資計画が着実に進展している。

出典: 経済産業省 — 宇宙戦略基金第3期 / 日本経済新聞 — 宇宙戦略基金第3期 / 総務省 — 宇宙戦略基金第3期

M&A・IPO

SpaceX × xAI — 史上最大級の合併

2026年2月、SpaceXはイーロン・マスク率いるAI企業xAIを全株式交換で買収し、xAIを完全子会社化した。合併後の企業価値は約1.25兆ドル。AIと衛星・打ち上げ能力の統合が狙いで、「宇宙ベースAIデータセンター」構想を加速させる。

SpaceXは合併後もIPOを2026年中頃に予定しており、バリュエーション1.5兆ドル、調達額最大$500億が見込まれる。実現すれば史上最大のIPOとなる。

出典: CNBC — SpaceX-xAI Merger / KraneShares — xAI-SpaceX Merger Complete

MDA Space — $300M IPO

カナダの衛星メーカーMDA SpaceがIPOで**$300M**を調達。調達資金はM&Aと債務返済に充当する方針。

出典: Bloomberg — MDA Space IPO

技術マイルストーン

Starship V3初静的燃焼試験

SpaceXはStarbase Pad 2でBooster 19(Raptor 3エンジン搭載のV3初号機)の静的燃焼試験を2026年3月に実施。V3は全長が従来より大型化し、低軌道への投入能力は100トン超。ただし試験は数秒で終了し、課題が残る可能性。Flight 12は2026年4月以降の見込み。

中国の再利用型実験宇宙船

2026年2月、長征2Fロケットで再利用型実験宇宙船を打ち上げ成功。中国は長征10号派生型の再利用ロケット初飛行を2026年前半に計画しており、再利用技術の実用化を急速に進めている。

商業宇宙ステーション — 2026年のブレークスルー

MIT Technology Reviewが選出した「2026年の10大ブレークスルー技術」に商業宇宙ステーションが選ばれた。Vast(Haven-1)、Axiom Space、Orbital Reefなど複数のプロジェクトがISS退役(2030年予定)後の後継として開発を進めている。

Orbit Fab × Astroscale — 軌道上燃料補給

Orbit FabとAストロスケールは、2026年6月に静止軌道での衛星燃料補給デモを予定。軌道上サービス(OOS)の商用化に向けた重要なマイルストーンとなる。

出典: MIT Technology Review — 10 Breakthrough Technologies 2026 / Astronomy.com — 2026 Space Missions

2026年Q2の見通し

テーマ注目イベント
打ち上げStarship Flight 12(V3初飛行、4月以降)、中国再利用ロケット初飛行(上半期)
有人宇宙Artemis II(月周回有人飛行)、NASA SLS+Orion
探査BepiColombo 水星軌道投入(ESA/JAXA共同)
IPOSpaceX IPO(6月以降の可能性)
政策宇宙戦略基金第3期の公募開始、Golden Dome具体化
軌道上サービスOrbit Fab × Astroscale 燃料補給デモ(6月予定)
望遠鏡ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡(2026年秋打ち上げ予定)

2026年Q2は、Starship V3初飛行とArtemis IIという2つの歴史的ミッションが控え、SpaceX IPOの具体化も相まって宇宙産業の転換点となる可能性が高い。日本はH3の運用再開時期と宇宙戦略基金第3期の公募動向が焦点となる。

主な出典

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