今宇宙には宇宙ステーションが2つ存在します。1つはISS、1つは中国の宇宙ステーション天宮です。
現在存在する宇宙ステーションは2つ
国際宇宙ステーション(ISS)は総体積は約935立方メートル、質量は約420トンと超巨大な人工衛星です。アメリカ、ロシア、日本を筆頭に15カ国が参加しています(その中に中国・韓国はありません)。
中国の宇宙ステーション天宮は、今後も増築されますが現在は3つのモジュールで構成されています。
項目 | 天宮 | ISS |
---|---|---|
運用開始 | 2022年 | 1998年 |
参加国 | 中国 | アメリカ、ロシア、欧州、日本、カナダなど15カ国 |
モジュール数 | 3 | 10以上 |
重量 | 約66トン | 約420トン |
軌道高度 | 約340~450km | 約350~420km |
滞在期間 | 最大180日 | 最大6ヶ月 |
実験分野 | 宇宙医学、宇宙材料、宇宙物理学など | 宇宙医学、宇宙生物学、宇宙材料、宇宙物理学など |
ISSの基本構成
ISSは合計43回のフライトで完成させました。長さは108.5m、幅は72.8mなだけあって沢山のモジュールで構成されています。
出典:NASA(和訳:JAXA https://humans-in-space.jaxa.jp/iss/about/config/)
代表的なモジュールの名称
・実は最も大きな部屋である「きぼう」
・ヨーロッパの実験棟である「コロンバス」
・アメリカの実験棟「ディスティニー」
・ロシアの居住等である「ズヴェズダ」+実験を行う「ナウカ」
・宇宙ステーションを支える柱は「トラス」と言われています
・太陽電池パネル
・熱を放出するラジエーター
・人や物資を運ぶ宇宙船(と繋がるドア)
・船外活動の出入り口であるクエスト
・通路はユニティ
ISSでこれまで行われてきた実験
ISSでは、様々な分野で数多くの実験が行われています。JAXAによると「きぼう」での実験は大きく下記に分かれています。
出典:JAXA https://humans-in-space.jaxa.jp/kibouser/subject/invitation/
実験カテゴリ
宇宙兄弟ではISSで「タンパク質」の実験を行い難病治療に役立てるシーンがありましたが、こちらも実際に実験テーマとして取り扱われているようです。
NASAによると実験カテゴリは大きく5つに区分されます。
- Life sciences
- 宇宙医学:宇宙空間における人体への影響
- 宇宙生物学:宇宙空間における生物の挙動
- 植物科学:宇宙空間における植物の成長
- 動物科学:宇宙空間における動物の行動
- Physical sciences
- 材料科学:微小重力環境における新しい材料の開発
- 化学:宇宙空間における化学反応の研究
- 物理学:宇宙空間における物理現象の研究
- 天文学:宇宙の観測
- Remote sensing
- 地球観測:地球環境の変化の観測
- 気象学:気象の観測
- 海洋学:海洋の観測
- 地質学:地球の構造や地質の観測
- Technology development
- ロボット工学:宇宙空間におけるロボットの開発
- 製造工学:宇宙空間における製造技術の開発
- エネルギー工学:宇宙空間におけるエネルギーの利用
- 通信工学:宇宙空間における通信技術の開発
- Education
- 宇宙教育:宇宙に関する教育プログラム
- 科学教育:科学に関する教育プログラム
- 技術教育:技術に関する教育プログラム
実験の例
中でも主要な分野と代表的な実験例をいくつか紹介します。
1. 宇宙環境科学
- 宇宙放射線による生物への影響:宇宙飛行士や生物試料を宇宙放射線に暴露し、健康への影響を調べる。
- 微小重力環境における流体挙動:微小重力環境下における液体の挙動を研究し、宇宙での物質輸送や熱伝達技術の開発に役立てる。
- 宇宙塵の観測:宇宙塵を捕集し、その組成や起源を分析する。
2. ライフサイエンス
- 宇宙空間における植物の成長:微小重力環境下における植物の成長の様子を観察し、宇宙での食料生産の可能性を探る。
- 宇宙空間における動物の行動:宇宙空間における動物の行動を観察し、長期宇宙滞在による生物への影響を調べる。
- 微小重力環境における細胞の挙動:微小重力環境下における細胞の挙動を研究し、新しい医薬品や治療法の開発に役立てる。
3. 材料科学
- 新しい材料の開発:微小重力環境下で結晶を成長させ、新しい特性を持つ材料を開発する。
- 宇宙空間における材料の劣化:宇宙空間における材料の劣化メカニズムを解明し、宇宙機や人工衛星の寿命を延ばす技術を開発する。
4. 宇宙探査技術
- 宇宙ロボットの開発:宇宙空間で活動できるロボットを開発し、将来の有人火星探査などに役立てる。
- 宇宙ごみの除去技術:宇宙空間のゴミを除去する技術を開発し、宇宙環境を保全する。
5. その他
- 地球観測:ISSから地球を観測し、気候変動や自然災害などの研究に役立てる。
- 教育プログラム:学生や一般市民向けに、宇宙に関する教育プログラムを実施する。
なぜISSで実験を行うのか
具体的な数値は定かではありませんが、ISSでは1,700を超える実験が行われたとされています。
その理由は大きく3つ、
宇宙環境の解明
ISSは、地上とは全く異なる環境にあります。微小重力、高真空、宇宙放射線など、地上では再現できない様々な条件が揃っています。このような環境下で実験を行うことで、宇宙の仕組みや法則をより深く理解することができます。
具体的には、以下の様な実験が行われています。
- 微小重力環境における物質の挙動:結晶成長、流体挙動、燃焼など
- 宇宙放射線による生物への影響:人体、動物、植物への影響
- 宇宙空間における材料の劣化:金属、樹脂、複合材料などの劣化
これらの実験結果は、宇宙開発の進展や、地球環境問題の解決などに役立てられることが期待されています。
将来の宇宙探査への基盤作り
ISSは、長期滞在型の宇宙ステーションです。宇宙飛行士が長期にわたって宇宙で生活するための技術や、宇宙旅行や宇宙移住を実現するための技術を開発することが目的の一つです。
具体的には、以下の様な実験が行われています。
- 生命維持システム:空気、水、食料の循環システム
- 宇宙医術:宇宙空間における病気や怪我の治療法
- 宇宙ゴミ対策:宇宙ゴミの除去技術
これらの実験結果は、将来の有人火星探査や、宇宙移住の実現に向けて不可欠なものです。
科学技術の進歩
ISSで行われる実験は、宇宙開発だけでなく、様々な分野の科学技術の進歩にも貢献しています。
具体的には、以下の様な分野で研究が進められています。
- 材料科学:微小重力環境下における新しい材料の開発
- 医薬科学:宇宙空間における新しい薬剤や治療法の開発
- ロボット工学:宇宙空間における作業を支援するロボットの開発
これらの研究成果は、地上での生活の質向上や、新たな産業の創出にもつながることが期待されています。
地上で役立っている実験
医療・健康
- 骨粗しょう症治療薬の開発: 微小重力環境で骨密度が低下する宇宙飛行士の研究から、骨粗しょう症の予防と治療に効果的な薬剤が開発されました。
- 人工関節の材料開発: 微小重力環境で金属が劣化しやすいことを解明し、人工関節の耐久性を向上させる新素材が開発されました。
- 再生医療技術の進歩: 宇宙空間での細胞培養技術の研究から、地上での再生医療技術の進歩に役立つ知見が得られています。
材料科学
- 半導体製造技術の向上: 微小重力環境で結晶が成長する仕組みを解明し、地上での半導体製造技術の向上に役立てられています。
- 新素材開発: 宇宙空間で発生する極端な環境に耐えられる新素材が開発されており、航空機や自動車などの分野で利用されることが期待されています。
- 3Dプリンター技術の進歩: 宇宙空間での3Dプリンター利用に関する研究から、地上での3Dプリンター技術の進歩に役立つ知見が得られています。
環境問題
- 地球観測技術の進歩: ISSから地球を観測することで、気候変動や森林伐採などの地球環境問題をより詳細に把握することができます。
- 災害予測技術の開発: 宇宙空間からのデータを利用して、地震や津波などの災害をより早く予測する技術が開発されています。
- 持続可能なエネルギー開発: 宇宙空間での太陽光発電や燃料電池に関する研究から、地上での持続可能なエネルギー開発に役立つ知見が得られています。
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