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衛星通信の周波数帯を解説 — L/S/C/Ku/Ka/Vバンドの特徴と用途一覧【2026年版】

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衛星通信の性能を左右する最も重要な要素の一つが「周波数帯」だ。使用する周波数によって通信速度、降雨減衰への耐性、アンテナサイズ、利用可能な帯域幅が大きく異なる。Starlinkが使うKu/Kaバンド、測位衛星みちびきのLバンド、次世代のVバンドまで、衛星通信の周波数帯の全体像を整理する。

この記事は「衛星通信の完全ガイド」の詳細記事です。

電波の基本 — 周波数と波長の関係

電波は電磁波の一種であり、周波数(Hz)と波長(m)で特性が決まる。周波数が高いほど波長は短くなり、大容量のデータを伝送できるが、大気中の水分による減衰(雨による信号の弱まり)を受けやすくなる。

電波の周波数と波長は以下の関係にある。

波長(m)= 光速(約3×10^8 m/s) / 周波数(Hz)

衛星通信では主にマイクロ波帯(1GHz〜300GHz)が使われる。この帯域は大気の「電波の窓」と呼ばれる透過帯に位置しており、宇宙空間との通信に適している。ただし、周波数が高くなるほど降雨減衰が顕著になるため、周波数の選択は地域の降雨量や用途に応じたトレードオフの判断が必要だ。

衛星通信の主要周波数帯 — 特徴と用途

周波数帯一覧

バンド周波数範囲波長主な用途降雨減衰帯域幅
Lバンド1〜2 GHz15〜30 cm測位(GPS/みちびき)、衛星電話、船舶通信極めて小さい狭い
Sバンド2〜4 GHz7.5〜15 cm気象レーダー、ISS通信、一部の衛星放送小さいやや狭い
Cバンド4〜8 GHz3.75〜7.5 cmテレビ中継、通信衛星、気象衛星小さい中程度
Kuバンド12〜18 GHz1.67〜2.5 cm衛星放送(BS/CS)、VSAT、Starlink中程度広い
Kaバンド26.5〜40 GHz0.75〜1.13 cm高速衛星インターネット、Starlink大きい非常に広い
Vバンド40〜75 GHz0.4〜0.75 cm次世代大容量通信(開発中)非常に大きい極めて広い

Lバンド(1〜2 GHz)

Lバンドは衛星通信の中で最も低い周波数帯の一つであり、降雨減衰がほとんどなく、建物の陰や森林でも比較的受信しやすい特徴を持つ。

GPS(米国)、GLONASS(ロシア)、Galileo(EU)、みちびき(日本)などの測位衛星はすべてLバンドを使用している。Iridium衛星電話もLバンドで通信しており、海上や砂漠など地上基地局のない場所でも安定した音声通話が可能だ。

Lバンドの欠点は帯域幅が狭いことだ。大容量データの伝送には向かず、音声通話や低速データ通信、測位信号の送信が主な用途となる。

Cバンド(4〜8 GHz)

Cバンドは衛星通信の黎明期から使われている歴史ある周波数帯だ。降雨減衰が比較的小さいため、熱帯地域のように豪雨が頻繁な地域でも安定した通信品質を確保できる。

テレビ中継、国際通信回線、気象衛星「ひまわり」の一部の通信にCバンドが使われている。ただし、近年は5G携帯電話網がCバンド(3.7〜3.98GHz帯)の一部を使用するようになり、衛星通信との干渉が世界的な課題となっている。米国では2022年にAT&TとVerizonが5GのCバンドサービスを開始する際、空港周辺での電波干渉リスクが問題となった。

Kuバンド(12〜18 GHz)

日本の衛星放送(BS/CS)はKuバンドを使用しており、直径45〜60cm程度の小型パラボラアンテナで受信できる。Cバンドのような大型アンテナ(直径2〜3m)が不要であることが、Kuバンドが衛星放送で普及した最大の理由だ。

Starlinkの第1世代衛星はKuバンドをユーザー端末との通信に使用している。VSAT(Very Small Aperture Terminal)と呼ばれる企業向け衛星通信端末もKuバンドが主流であり、災害時の臨時回線や船舶のブロードバンド接続に広く使われている。

Kuバンドは雨による減衰がCバンドより大きい。日本のBS放送で豪雨時に映像が乱れるのは、このKuバンドの降雨減衰が原因だ。

Kaバンド(26.5〜40 GHz)

Kaバンドは高速衛星インターネットの主力周波数帯だ。Kuバンドの約2〜3倍の帯域幅を利用でき、数百Mbpsクラスの高速通信が可能となる。

Starlinkの衛星間通信(レーザーリンク非対応の初期衛星)やゲートウェイ局との通信にはKaバンドが使われている。Amazon Kuiper、OneWebもKaバンドを主要周波数帯として採用している。

Kaバンドの最大の課題は降雨減衰だ。豪雨時には信号の減衰が10dBを超えることもあり、通信品質が大幅に低下する。この対策として、適応変調符号化(ACM)技術が用いられる。ACMは降雨時に変調方式をより堅牢なものに切り替えることで通信を維持するが、その分スループットは低下する。

Vバンド(40〜75 GHz)

Vバンドは次世代の大容量衛星通信に向けて開発が進む周波数帯だ。Kaバンドの数倍の帯域幅が利用可能で、テラビット級の衛星通信ネットワークの実現が期待されている。

SpaceXのStarlink Gen2衛星はVバンドの利用をFCCに申請しており、将来的にはKu/Ka/Vの3バンドを組み合わせた大容量通信が実現する見込みだ。ただし、Vバンドは降雨減衰が極めて大きく、晴天時でも大気中の酸素分子による吸収が60GHz付近でピークを迎えるため、技術的な課題は多い。

日本で使われる衛星の周波数帯

衛星・サービスバンド用途
みちびき(QZSS)Lバンド準天頂衛星測位システム
ひまわり8/9号Cバンド、Kaバンド気象観測データの地上伝送
BS/CS放送衛星Kuバンドテレビ放送
きらめき(Xバンド防衛通信)Xバンド(8〜12GHz)防衛省の秘匿通信
ETS-9(技術試験衛星9号)Kaバンド高速衛星インターネット技術実証
Starlink(日本サービス)Ku/Kaバンド高速インターネット接続

周波数帯の選び方 — 用途別の最適解

周波数帯の選択は「速度vs安定性」のトレードオフだ。

低い周波数(L/Sバンド)は降雨に強く安定しているが、通信速度は遅い。測位や衛星電話など、低速だが確実な通信が求められる用途に適している。

高い周波数(Ka/Vバンド)は大容量・高速通信が可能だが、降雨減衰に弱い。高速インターネットやデータ中継など、大容量データが必要な用途に向いている。

実際のシステム設計では、複数の周波数帯を組み合わせるマルチバンド構成が増えている。Starlinkは平常時にKaバンドで高速通信を行い、降雨時にはKuバンドで安定性を確保する設計思想を持つ。

よくある質問(FAQ)

Q1: 衛星放送で豪雨時に映像が乱れるのはなぜですか?

日本のBS/CS衛星放送はKuバンド(12GHz帯)を使用しており、雨粒が電波を吸収・散乱するため、豪雨時に受信信号が弱まる。これが降雨減衰だ。通常の雨であれば問題ないが、時間雨量30mmを超えるような豪雨では映像のブロックノイズや受信不能が発生することがある。

Q2: Starlinkはどの周波数帯を使っていますか?

Starlinkはユーザー端末との通信にKuバンド、ゲートウェイ局との通信にKaバンドを使用している。新型のStarlink Gen2衛星ではVバンドの利用も計画されている。衛星間通信にはレーザー光(光通信)を使用しており、電波ではなく光による高速リンクを実現している。

Q3: 5Gと衛星通信の電波干渉は問題になっていますか?

Cバンド(3.7〜4.2GHz帯)での干渉が世界的な課題だ。5G携帯電話網がCバンドの一部を使用するようになったため、同帯域で運用される衛星通信やレーダー高度計との干渉リスクが指摘されている。各国の周波数管理当局がガードバンド(干渉防止用の周波数間隔)の設定やフィルタの装着義務化などの対策を進めている。

Q4: 将来的にはどの周波数帯が主流になりますか?

衛星インターネットではKaバンドが現在の主流だが、帯域幅の需要増大に伴いVバンド(40〜75GHz)への移行が進む見込みだ。さらに将来的にはW帯(75〜110GHz)やテラヘルツ帯の利用も研究されている。一方で、降雨減衰の問題は周波数が上がるほど深刻になるため、地上の光ファイバーとの統合や適応制御技術の高度化が不可欠だ。

まとめ

衛星通信の周波数帯は、用途と環境に応じた最適な選択が求められる。LバンドからVバンドまで、各帯域にはそれぞれの強みと弱みがあり、万能な周波数帯は存在しない。今後はマルチバンド対応と適応制御技術の進化により、衛星通信はさらに高速化・安定化していく。日本でもStarlinkの普及やみちびきの高精度測位サービス拡充により、衛星通信の周波数帯に対する理解はますます重要になるだろう。

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