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系外惑星とハビタブルゾーン — 第二の地球候補を探す最前線


はじめに — 太陽系の外に「地球」はあるか

1995年、スイスの天文学者ミシェル・マイヨールとディディエ・ケローが、太陽に似た恒星の周りを回る初の系外惑星(ペガスス座51番星b)を発見した。以来約30年で、確認された系外惑星は5,700個以上に達している。

その中で最大の関心事は、「第二の地球」が存在するかどうかだ。液体の水が存在できるハビタブルゾーンにある地球サイズの惑星の発見が、天文学の最大目標の一つとなっている。


ハビタブルゾーンとは

ハビタブルゾーン(HZ)は、恒星の周りで液体の水が天体表面に存在できる距離の範囲だ。「ゴルディロックス・ゾーン」とも呼ばれる。

太陽系の場合、ハビタブルゾーンはおよそ0.95〜1.67AUの範囲だ。地球(1AU)はこの中にあり、金星(0.72AU)は内側、火星(1.52AU)は外縁付近に位置する。

ただし、ハビタブルゾーンにあるからといって生命が存在するとは限らない。大気の組成、磁場の有無、地質活動など、多くの条件が必要だ。


系外惑星の発見方法

トランジット法

惑星が恒星の前を通過する際の微小な減光を検出する方法。ケプラー宇宙望遠鏡とTESSが主にこの方法を使用。発見された系外惑星の約75%がこの方法で見つかっている。

減光量から惑星の大きさが、周期から軌道距離がわかる。さらにJWSTを使えば、トランジット時に恒星の光が惑星大気を通過する際のスペクトル変化から、大気成分を分析できる。

視線速度法(ドップラー法)

惑星の重力で恒星がわずかに揺れる運動を、光のドップラーシフトとして検出する方法。初の系外惑星発見に使われた手法であり、惑星の質量推定に有効だ。

直接撮像法

惑星からの光を直接撮影する方法。恒星の圧倒的な明るさに対して惑星は極めて暗いため、コロナグラフなどの技術で恒星光を遮断する必要がある。若い巨大惑星の一部で成功例がある。


第二の地球候補

TRAPPIST-1系

2017年に発表されたこの系は、7つの地球サイズの惑星を持つ。そのうち3つ(e, f, g)がハビタブルゾーン内にある。主星は超低温矮星(M型星)で、太陽より遥かに小さく暗い。

JWSTによる大気分析が進行中で、TRAPPIST-1bとcには厚い大気がない可能性が示唆されている。残りの惑星の観測結果が待たれる。

プロキシマ・ケンタウリb

太陽系に最も近い恒星プロキシマ・ケンタウリ(4.24光年)のハビタブルゾーンにある地球サイズの惑星。ただし主星のフレア活動が激しく、大気が剥ぎ取られている可能性がある。

ケプラー442b

地球の1.34倍の大きさで、ハビタブルゾーンの中心付近を公転する。地球類似度指数(ESI)が高い惑星の一つだが、約1,200光年と遠く、詳細な観測は困難だ。

K2-18b

地球の8.6倍の質量を持つ亜海王星型惑星。JWSTが大気中にメタンとCO2を検出し、水蒸気の存在も示唆されている。生命由来の可能性があるジメチルスルフィドの痕跡も報告されたが、確認には追加観測が必要だ。


ケプラー宇宙望遠鏡の遺産

2009年から2018年まで運用されたケプラーは、約2,700個の系外惑星を発見した(確認済み)。最大の発見は、銀河系に地球サイズの惑星が数十億個存在し、そのうちかなりの割合がハビタブルゾーンにあるという統計的推定だ。

ケプラーのデータは今でも分析が続いており、新たな惑星候補が定期的に報告されている。


TESSと次世代探索

NASAのTESS(Transiting Exoplanet Survey Satellite)は2018年から運用中で、太陽系に近い明るい恒星の周りの惑星を探索している。ケプラーが遠い星を集中的に観測したのに対し、TESSは全天をカバーする。

今後の計画では、ESAのPLATO(2026年打ち上げ予定)やNASAのハビタブル・ワールズ・オブザバトリー(HWO、2030年代後半)が、直接撮像による地球型惑星の大気分析を目指す。


生命の兆候(バイオシグネチャー)

系外惑星の大気中に生命の存在を示す化学物質を「バイオシグネチャー」と呼ぶ。主な候補は:

  • 酸素(O2): 地球では光合成生物が大量に生成
  • オゾン(O3): 酸素から生成される。紫外線観測で検出しやすい
  • メタン(CH4): 生物活動で生成されるが、地質活動でも生じる
  • ジメチルスルフィド(DMS): 地球では主に海洋プランクトンが生成

単一の分子では生命の証拠とならず、複数の分子の組み合わせと、非生物的プロセスの排除が求められる。


まとめ

系外惑星探索は、人類が「宇宙で孤独か」という根本的な問いに科学的に取り組む試みだ。5,700個以上の発見を経て、銀河系に地球に似た惑星が数十億個存在することがわかった。JWSTによる大気分析と、次世代望遠鏡の登場で、生命の兆候を捉える日が近づいている。


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