月・火星探査とは、ロボット探査機や有人ミッションで月と火星の科学調査・資源探査・将来の人類居住を目指す活動だ。2026年はArtemis IIによる有人月周回飛行が実施され、中国は嫦娥7号で月南極の水氷探査を計画、SpaceXはStarshipによる火星輸送の技術実証を加速している。本記事ではこれらの探査計画の全体像と、各国の月面基地・火星移住構想をまとめる。
はじめに — 月と火星の「第二の宇宙開発競争」
1969年のアポロ11号から半世紀以上が経ち、人類は再び月を目指している。だが今回の目的は「旗を立てて帰る」ことではない。月面に恒久的な基地を建設し、月の資源を利用し、その先にある火星への足がかりとすることだ。
2026年現在、月・火星探査を推進する主要プレーヤーは米国(NASA)、中国(CNSA)、ESA、JAXA、インド(ISRO)、そしてSpaceXに代表される民間企業だ。各国の計画は協力と競争が入り混じり、「第二の宇宙開発競争」と呼ばれている。
Artemis計画 — 米国の月回帰
計画の全体像
NASAのArtemis計画は、持続的な月面プレゼンスの確立を目指す長期プログラムだ。
| ミッション | 時期 | 内容 |
|---|---|---|
| Artemis I | 2022年(完了) | 無人Orion宇宙船の月周回飛行試験 |
| Artemis II | 2026年4月 | 有人月周回飛行(4名の宇宙飛行士) |
| Artemis III | 2027年以降 | 有人月面着陸(SpaceX Starship HLS使用) |
| Artemis IV | 2028年以降 | Gateway宇宙ステーションとのドッキング |
| Artemis V以降 | 2029年〜 | 月面基地の段階的建設 |
Artemis計画の詳細はアルテミス計画 わかりやすく解説で、Artemis IIの最新情報はArtemis II ミッション詳細とArtemis II ロールアウト速報で解説している。
SLS(Space Launch System)
Artemis計画の打ち上げを担うNASAの超大型ロケットSLSは、地球低軌道に95トンの打ち上げ能力を持つ。ただし1回の打ち上げコストは約40億ドルと高額で、持続可能性への批判もある。ロケットの比較はロケット完全ガイド 2026年版と打ち上げコスト比較を参照。
Orion宇宙船
LockheedMartinが開発するOrion宇宙船は、4名の宇宙飛行士を月軌道まで輸送する深宇宙有人宇宙船だ。ESAが提供するサービスモジュールが推進・電力・生命維持を担当する。
Gateway — 月軌道の宇宙ステーション
Gatewayは月軌道に建設される小型宇宙ステーションで、月面への中継基地として機能する。NASAを中心にESA、JAXA、CSA(カナダ宇宙庁)が参加する国際プロジェクトだ。
- 軌道: 近直線ハロー軌道(NRHO)
- 居住モジュール: HALO(Northrop Grumman)
- 推進モジュール: PPE(Maxar Technologies)
- 日本の貢献: 居住棟の環境制御・生命維持システム、バッテリー
- 打ち上げ: 2027年以降にSpaceX Falcon Heavyで
Gatewayの詳細は月軌道ステーション Gatewayで解説している。
中国の月探査 — 嫦娥計画とILRS
嫦娥計画の歩み
中国の月探査は「嫦娥計画」として体系的に進められてきた。
| ミッション | 年 | 成果 |
|---|---|---|
| 嫦娥1号 | 2007年 | 月周回探査 |
| 嫦娥3号 | 2013年 | 月面着陸(玉兎ローバー) |
| 嫦娥4号 | 2019年 | 世界初の月裏面着陸 |
| 嫦娥5号 | 2020年 | 月面サンプルリターン(1,731g) |
| 嫦娥6号 | 2024年 | 世界初の月裏面サンプルリターン |
| 嫦娥7号 | 2026年計画 | 月南極の水氷探査 |
| 嫦娥8号 | 2028年計画 | 月面基地の技術検証 |
月の裏側については月の裏側 完全解説で詳しく解説している。
国際月面研究ステーション(ILRS)
中国はロシアと共同で2030年代に月面基地ILRSの建設を計画している。エネルギー、通信、ナビゲーション、月面活動の基本インフラを整備し、国際参加も呼びかけている。Artemis計画とは独立した「もう一つの月面基地計画」として、パキスタン、南アフリカ、エジプト等10カ国以上が参加を表明している。
月面基地計画の比較
| 計画 | 主導 | 想定時期 | 場所 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| Artemis Base Camp | NASA | 2030年代 | 月南極 | 国際協力・民間活用 |
| ILRS | 中国・ロシア | 2030年代 | 月南極 | 独自路線・ロボット先行 |
| Moon Village | ESA構想 | 2030年代〜 | 未定 | 開放型・多目的 |
月面基地の具体的な設計・建設方法については月面基地計画 2026年版と宇宙居住施設の設計を参照。
火星探査 — ロボットから有人へ
火星探査の歴史
| ミッション | 国 | 年 | 成果 |
|---|---|---|---|
| Viking 1/2 | 米国 | 1976年 | 初の火星着陸・生命探査 |
| Pathfinder | 米国 | 1997年 | 初のローバー(Sojourner) |
| Spirit / Opportunity | 米国 | 2004年 | 長期ローバー探査 |
| Curiosity | 米国 | 2012年〜 | 有機物発見・現在も活動中 |
| 天問1号 | 中国 | 2021年 | 中国初の火星着陸・祝融ローバー |
| Perseverance | 米国 | 2021年〜 | サンプル採取・Ingenuityヘリ |
火星ローバーの歴史は火星探査車の歴史、Ingenuityヘリコプターは火星ヘリコプター Ingenuityで詳しく解説している。
SpaceXの火星移住構想
SpaceXの最終目標は「人類を多惑星種にする」ことだ。Starshipは完全再使用型の超大型ロケットで、100トン以上のペイロードを火星に輸送する能力を持つ。Elon Muskは2030年代前半に有人火星着陸を目標としているが、技術的課題(放射線防護、長期生命維持、火星表面での推進剤製造)は依然として大きい。
Starshipの最新スペックはStarship V3 スペック比較で確認できる。
火星の環境と課題
火星は地球の次に居住可能性が高い太陽系天体だが、以下の課題がある。
- 大気: CO2が95%、気圧は地球の約0.6%
- 気温: 平均マイナス60℃
- 放射線: 大気と磁場が薄く、宇宙放射線が地表に到達
- 水: 極冠と地下に氷として存在
火星の環境は火星の環境条件で、テラフォーミングの可能性はテラフォーミング — 火星と金星と火星テラフォーミングの可能性で解説している。
日本の月・火星探査
LUPEX(月極域探査)
JAXAとISROの共同ミッションLUPEXは、月南極の永久影クレーター内の水氷を直接確認することを目的としている。ローバーによる掘削調査で、水資源の量と分布を明らかにする。
はやぶさ2 拡張ミッション
はやぶさ2は小惑星リュウグウからのサンプルリターンに成功した後、拡張ミッションとして小惑星トリフネに向かっている。2031年の到着予定で、太陽系の起源と生命の材料に関する新たな知見が期待される。
はやぶさ2についてははやぶさ2 トリフネ拡張ミッションとリュウグウのDNA構成要素で解説。
月探査の全体像
日本の月探査計画全般については月探査ガイド 2026年版で体系的にまとめている。
その他の注目ミッション
ベピコロンボ(水星探査)
ESAとJAXAの共同ミッション「ベピコロンボ」は、2025年末に水星軌道に到着予定。水星の磁場、地質、大気の本格観測を行う。詳細はベピコロンボ 水星探査ミッションを参照。
ボイジャー
1977年に打ち上げられたボイジャー1号・2号は、太陽圏を超えて星間空間を航行中。人類が最も遠くに送った人工物として、今なお科学データを地球に送り続けている。ボイジャーの現在地とゴールデンレコードの遺産で解説。
まとめ
- 2026年のArtemis IIで人類は半世紀ぶりに月圏に帰還する
- 月面基地は米国主導(Artemis)と中国主導(ILRS)の2系統で競争
- 火星有人探査はSpaceX Starshipが鍵。2030年代前半が目標
- 日本はLUPEX・はやぶさ2・Gatewayへの参画で存在感を発揮
- 嫦娥計画は月裏面サンプルリターンの世界初を達成済み
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- 月の裏側 完全解説
- 火星探査車の歴史
- 火星ヘリコプター Ingenuity
- 火星の環境条件
- テラフォーミング — 火星と金星
- はやぶさ2 トリフネ拡張ミッション
- ベピコロンボ 水星探査ミッション
- ボイジャーの現在地
- Starship V3 スペック比較
- ロケット完全ガイド 2026年版
- 月面経済 2026年版
- 火星移住タイムライン
- インドの宇宙開発 2026年版
参考としたサイト
- NASA Artemis: https://www.nasa.gov/artemis/
- CNSA: https://www.cnsa.gov.cn/
- JAXA 月・惑星探査: https://www.jaxa.jp/projects/rockets/
- ESA Exploration: https://www.esa.int/Science_Exploration/Human_and_Robotic_Exploration
- SpaceX Mars: https://www.spacex.com/human-spaceflight/mars/
- Planetary Society: https://www.planetary.org/