スペースデブリの歴史とこれからの未来

2024年6月にアストロスケール社が上場します。IPO基礎によると、上場日は6月5日(水)。昨年の売り上げは1,793億円で、利益はマイナス9,314億円。そんな状況にも関わらず上場できて、かつ想定時価総額804.2億円と上場した国内宇宙企業で最も高い評価となりました。

ispace社や他の企業が、上場時より小さな売上(ispace社の場合6億円)だったからかもしれません。有価証券報告書を参照すると米国からの受注があったからかもしれません。デブリではないですが、同社のUS支社は2026年までに燃料補給機の試作をアメリカ宇宙軍に提供する予定です。

国内での評価はひとえにスペースデブリ、宇宙ゴミに対する注目です。この記事では宇宙ゴミの歴史とこれからの未来について考察します。

目次

スペースデブリ(宇宙ゴミ)の歴史

そもそも宇宙ゴミは人類がロケットや衛星を打ち上げるまで存在していませんでした(空間に隕石などはあったと思います)。弾丸の10倍の速さで飛ぶため小さなものでも脅威となる宇宙ゴミは人によって増やされました。

1957年:宇宙ゴミの幕開け

宇宙ゴミの歴史は、1957年に旧ソ連が世界初の人工衛星「スプートニク1号」を打ち上げたことに始まります。その後、宇宙開発競争が激化し、人工衛星やロケットの打ち上げが頻繁に行われるようになりました。その結果、軌道上に破片や使用済みの人工衛星などが残されるようになり、これが宇宙ゴミの最初の問題となりました。

1970年代:宇宙ゴミの増加と認識

1970年代に入ると、宇宙ゴミの数が急速に増加し、国際的な問題として認識されるようになりました。1978年は旧ソ連の人工衛星(コスモス954号)が大気圏に突入して、カナダの雪原に放射性物質をまき散らしたことありました。

1980年代:対策の模索

1980年代には、宇宙ゴミの除去技術の開発が始まりました。しかし、当時は技術的な問題や費用面の問題から、本格的な対策は進められませんでした。そんな中1986年にフランスの小型衛星シリーズと、アリアンロケットが起こした爆発の際に発生したと思われる破片が衝突したという事故は宇宙ゴミをさらに増やしました。

1990年代:衝突事故の増加

1990年代に入ると、宇宙ゴミの衝突事故が再び増加し始めました。1994年に軌道上を漂っていた米国のペガサスロケットの上段部分が突如爆発し,高度250~2500kmの広い範囲にわたって,地上から観測できる大きさのものだけで700個以上の宇宙ゴミができました。1996年には、フランスの人工衛星「セリース」が宇宙ゴミと衝突し、衛星の一部が破片となってしまいました。

2000年代以降:宇宙ゴミ問題の深刻化

2000年代以降は、民間の宇宙業界参入もあり衛生打ち上げ機会が増え、衛生同士・宇宙ゴミとの衝突リスクも増えて宇宙ゴミがより深刻化しました。

2007年1月11日:中国は、古くなった気象衛星「風雲1C」を、地対空ミサイルで撃墜。約3000個もの破片が発生し、国際宇宙ステーションにも接近する危険性が生じました。

2009年11月22日:アメリカの通信衛星「イリジウム33」と、ロシアの軍事衛星「コスモス2251」が衝突。両衛星合わせて数万個近くのデブリが発生しました。

2013年5月13日:中国は、老朽化した衛星「SJ-16」を、地対空ミサイルで撃墜しました。この実験により、約1500個の破片が発生しました。

2013年10月15日:国際宇宙ステーション(ISS)が、宇宙ゴミを回避するために緊急機動を実施。今日に至るまでISSは大きな機体をなん度も動かして回避しています。ただし、有人の船外活動で目視できない宇宙ゴミにぶつかる可能性は0ではありません。2018年3月9日に米国防総省が、中国の衛星破壊実験で発生した約150個の宇宙ゴミが、国際宇宙ステーションに接近する可能性があると発表したこともありました。

2015年2月11日:SpaceX社の「Falcon 9」ロケットをがアメリカ海洋大気庁(NOAA)の宇宙天気観測衛星「Deep Space Climate Observatory(DSCOVR)」を打ち上げた。再利用不可能な2段目のロケットブースターが宇宙に取り残されデブリになった。

2021年11月15日:ロシアは「コスモス1408」と推定される衛星に、対衛星攻撃兵器ASATを発射して破壊。3分の2が軌道から落下し約1500個の観測可能な宇宙ゴミが発生しました。より小さなものだと数十万個発生したとされています。

現在の状況

JAXAによると、2010年時点で宇宙ゴミは50万個以上あることが明確になっていました。

宇宙ごみ(スペースデブリ)の数は2010年現在で10cm以上のものが約20,000個、10cm未満1cm以上のものは約50万個あります。また、現在運用中の人工衛星は約1,000個あり、運用が終了した人工衛星についても約2,600個あります。

JAXA, 宇宙ごみ(スペースデブリ)の数はどのくらいですか?1年間に落下する数はどのくらいですか?

SpaceX社のStarlinkは軌道上に6,000個ありますが、宇宙ゴミを毎日140回回避していると言われています。2024年も、中国の宇宙ステーションに宇宙ゴミが衝突し宇宙飛行士が船外活動で修理したことがニュースになりました。

宇宙服を容易に貫通する威力をもっている宇宙ゴミの脅威は、数が増えるにつれ増すばかりです。他にもUchuBizによると破片の地上落下による怪我や死亡リスクは年間0.6人や2年に1人、航空機との衝突リスクは年間0.0007%など地球上でも起こりうる可能性を米国(SpaceX社および米連邦航空委員会(FAA))が試算しています。

宇宙ゴミ対策の未来

現在、宇宙ゴミ問題は国際的な課題となっており、各国が協力して対策に取り組んでいます。この宇宙ゴミ市場は大きく3つの分野に分かれます。

発生を抑制する

宇宙ゴミの発生抑制: ロケットの設計変更や、衛星の運用方法の改善などにより、宇宙ゴミの発生量を抑制する取り組み

監視し回避能力を上げる

レーダーや望遠鏡を用いて、宇宙ゴミの状況を監視する体制の強化することです。Starlinkが毎日たくさん回避していることは話題に挙げましたが、この回避能力の向上も重要です。

宇宙ゴミの除去

ここがアストロスケール社のメイン事業です。売り上げからも分かる通り、この領域はまだ「買い手」が存在しません。すでに1cm以下を含めると何億個と存在する宇宙ゴミを完全に回収し切ることのコストを国レベルでも出すのは容易ではないからです。法改正によって、宇宙ゴミを出したら回収しないと罰金!という状況がチャンスです。

まとめ

宇宙ゴミ問題は、人類の宇宙活動がもたらした新たな課題です。今後も国際的な協力体制を築きながら、宇宙ゴミ対策に取り組んでいくことが重要となります。

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