高速二地点間輸送(P2P)
アメリカへの移動、飛行機の中で12時間…エコノミークラスだと発生するエコノミー症候群。飛行機も大きな前進ですが、正直この12時間でかなり辛い思いをしている方も少なくないはず。
そんな世界旅行の移動手段は飛行機、とういう概念を根本から覆す技術がロケットの開発から生まれます。
宇宙港を活用してP2P輸送は実現
世界中で宇宙港は増え続けています。日本は天災を除けば宇宙港設置場所として恵まれた環境。日本だけでも6拠点あるとされています。
これら宇宙港の2つを繋いで高速二地点間輸送(P2P)が実現したら、私たちの世界中の移動の仕方が変わります!
実現に必要な要件
まだまだ輸送手段としてロケットを活用するには早く、安全面やコスト面など配慮すべき点が複数あります。
①ロケット発射の低コスト化
現状ロケット発射にかかるコストは高い!1回の発射で何百人乗せるロケットはSpaceXが現在開発中のStarship。100,000kg乗せることが可能です。ボーイング787の飛行機は機体が200,000kgあると思うので、最大離陸重量が254,016kgだとすると54,016kg乗せることが出来ます。Starshipでようやく既存の飛行機と同程度(または2倍)の人が乗れるようになりそうですが、稼働にかかるコストは
飛行機(国際便・1例)
機体コスト:3.5億ドル(533億円)
再利用限度:60,000 フライト
1回あたり88万円の機体代がかかるとする
その他経費を仮に50万円プラスして、1回のフライトで138万円かかったとして
250人乗れると想定すると1人あたり5,520円です。
※数字はかなり大雑把に算出してるので、目安としてください
ロケット(Starship)
1回あたり200万ドル
=1回あたり約3億円($1 = ¥150)
もし飛行機の2倍人が乗れたとしても、500人乗れて1人あたり600,000円です(利益を考えるともっとかかる)。
なおStarshipは宇宙空間(地上から100メートル以上)へ飛ぶことを前提としたロケットです。
現状地上から30メートル地点(地球低軌道)への旅行でも4、5,000万円かかります。地球低軌道用のロケットがP2Pでは用いられるとしても最低限飛行機のビジネスクラスレベルまで価格が下がらないと輸送手段としては起用できないでしょう。
②宇宙港の規模と充実
ロケットの発射を可能とする宇宙港は現状の飛行機用空港とは異なる部分が出てきます。
宇宙港といっても垂直型と水平型がありますが、水平型でも必要な滑走路の長さが異なるみたいです。
3000m級の滑走路があれば、物理的には世界のどこでも着陸できることになる。
https://www.mitsubishielectric.co.jp/me/dspace/column/c2301_1.html
現在P2P旅行開発に取り組む企業事例
実際にP2Pを可能にするロケットの開発に取り組む企業を国内・海外合わせていくつか紹介します。
なお2023年9月、文部科学省からロケット開発で採択され最大143億円の支援を受けることが決定しました。今回はすでに宇宙旅行を提供している米国企業がメインですが、今後日本の企業も増やしていきます。
SpaceX
言わずもがな、イーロンマスク氏が創業した今民間企業の枠を超えて世界で最もロケットを飛ばしている会社です。3日に1本の頻度で人工衛星ロケットを打ち上げています。
そんなSpaceX社ですがCNETの記者Eric Mack氏によると2022年、宇宙を経由した貨物の2地点間輸送の提供で、米国防総省と約1億200万ドル(約150億円)の契約を結んでいます。
NASAは2028年設置予定のStarlabという商業宇宙ステーションを、SpaceX社のロケットを活用して飛ばすと決めました(2024年2月15日)。
NASAはスペースシャトル以来自らロケットを飛ばしてません。アメリカは今後もSpaceX社含む民間企業に委託しロケットを飛ばすことが想定されています。
Virgin Galantic
Virgin Galantics社はすでに宇宙旅行をサービスとして提供しています。現在は800人待ち。日本人もこの会社を通して宇宙旅行へ行きました。スペースプレーンと定義される、宇宙旅行用の飛行機です。
このようなスペースプレーンの発射場として水平型の宇宙港が必要とされています。
宇宙関連企業ヴァージン・ギャラクティックは11日、ロケット宇宙船「ユニティ」の有人試験飛行に成功した。創業者で英実業家のサー・リチャード・ブランソンも搭乗し、目標の高度80キロ以上に到達した。
https://www.bbc.com/japanese/57801386
将来宇宙輸送システム株式会社
再利用型の人工衛星打ち上げロケットを開発の後、人が乗れる宇宙飛行機(スペースプレーン)を作ろうとしている日本の民間企業です。
NASAは超音速旅客機の開発を推進中
超音速ジェット機コンコルドを覚えていますか?度重なる事故で製造中止に追い込まれたジェット機ですが最大速度は時速約1340マイル(約2179km/h)=マッハ2をわずかに上回る速度で進む旅客機です。なんと1976年にはスタートし2003年ごろまで運用されていたのですが、
NYとロンドンを約3時間で移動しました。
定員は100人で価格は1席20,000ドル(200万円)、需要はさほど大きくなかったようですがタイムパフォーマンスを考えると破格な気がします。
NASAは2023年9月に、民間企業に対してコンコルドよりも早くて安全な旅客機を作るよう要請しました。
現在もNASAはロッキード・マーティンが開発中の超音速かつ低騒音の飛行機「X-59」を開発中です。その他大手飛行機製造会社のボーイング(Boeing)とノースロップグラマーン(Northrop Grumman)が開発契約を獲得し、現在マッハ4で移動する旅客機の製造を行っています。
ボーイング(Boeing)とノースロップグラマーン(Northrop Grumman)は両社ロケット製造も手掛けていますが、同時に音速旅客機も開発する…P2P市場の加速と移動手段の選択肢増加が楽しみですね。
超音速旅客機「オーバーチュア(Overture)」
米国のスタートアップBoom Supersonic社は現在マッハ1.7の超音速旅客機を開発中です。Yahoo Newsによると、東京~サンフランシスコの移動を6時間にするようで期待が高まっています。
すでにJAL含む多数の大手航空会社が発注に動いているようです。
価格もビジネスクラス程度(NY – ロンドンで $5,000)の料金で第1号機の乗客定員は65~80人。現在の飛行機と比較して移動時間が半分になるなら人気が出そうです^^
参照元:
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/mext_01297.html
https://www2.deloitte.com/jp/ja/blog/science-and-technology/2021/spaceport-value.html