火星に人は住めません。少なくとも現状は100%不可能です。火星への人類移住計画を打ち立てているSpaceX社の創業者イーロンマスク氏も状況を理解しています。
ではなぜ彼は火星プロジェクトを進めるのでしょうか?
この記事では火星についてとイーロンマスク氏の計画について紹介します。
火星はどんな星?
火星はとてつもなく遠くにあり、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は現在の技術では約250日かかるとしています。移動中、ロケットは常に被曝状態で火星に到着することには医療的に危険とされる年間被曝量の半分に値する放射線を浴びます。
火星に到着しても、大気圧は地球のおよそ160分の1しかないほど薄いため放射線を浴び続けることに変わりはありません。火星の大気のほとんどは二酸化炭素で構成されており酸素が含まれません。とはいえ地表の赤みは酸素が鉄と組み合わさった酸化鉄と、酸素が火星にないわけではありません。
2023年にNASAが作成した火星地図によると、昔はあったとされる水は一角に氷として固まっているようです。この近くに人を送れば水問題は解決する、とされていますが基本は常に凍るほど寒く昼がマイナス20~40度、夜がマイナス80度です。氷の近くはマイナス125度ほどになる恐れも。
更に火星の土・レゴリスは有毒です。砂嵐が頻繁に発生し、それによって生成される物質も有害です。
このままだと地球の生物は生存できません。多分テラフォーマーズのようにGを送り込んでも死にます。
それでも地球のもう1つのお隣さん、金星と比較するとマシです。金星と違って灼熱でもなければ、二酸化炭素で構成された空気は毒ではありません。
火星で人が住むには何が必要?
まとめると問題は大きく5つ
・大気が薄く放射線が降り注ぐ
・呼吸用の酸素がない
・氷はあるが水がない
・気温が低すぎる
・土が有毒で砂嵐の砂やレゴリスが体内に入ると猛毒
今火星移住に向けて開発されている二酸化炭素から作る酸素生成機械や氷を溶かして水を生成する機械等を使えば、火星に水も酸素も存在自体はするのですんでいける可能性が残っています。
2021年、NASAの最新の探査ローバ「パーサヴィアランス」に搭載された実験機器によって、火星上で継続的に酸素の生成に成功しました。
氷を溶かして水を生成するため、基地は氷の近くに作られる想定です。
他にも3Dプリンターと火星のコンクリートを活用して作る等の実験がなされており、砂嵐からも放射線からも守れる耐久性ある基地を作る計画も立てられています。火星の自然の天然地下も、人が砂嵐や放射線から身を守るのに活用できるのでは?と言われています。
ということで、火星が選ばれました。
ちなみに月に住むのは不可能なのでしょうか?直線だと約10時間程度で到着する月なら、移動も苦ではありません。月への移住計画も存在しますが、現在はどちらかというと月は火星へ行くための中継地です。なお月面上も火星と同じくずーっと被曝状態です。
ただし、月も火星も生活基盤は基地の中。外に出るには宇宙服が必要。そんな生活に当面なることは間違いなさそうです。
イーロンマスクはなぜ火星を目指すの?
いろんな発言を追ってみましたが、結論真意は分かりません。
イーロンマスク氏は2050年までに火星に100万人を移住させると宇宙国際会議にて宣言しました。
“I think we could have a million people on Mars within 50 years. I think that’s a good goal to shoot for.”
2016年 国際宇宙開発会議
TED Talkで私たちは多惑星種になる必要があると説いています。宇宙進出文明の最初の一歩としてまず火星に行くべきだと。
We need to become a multi-planetary species. If we want to be a spacefaring civilization, we need to go to Mars.
TED Talk
2023年にはX(旧Twitter)上で、人類存続のための多惑星種だと発現しました。直訳:文明の継続を確実にするためには、生命を多惑星種にすることが最も重要です。
Making life multi-planetary is the most important thing we can do to ensure the continuation of civilization.
X(旧Twitter)
SpaceXの企業サイトにて「素晴らしい未来を夢見て起きられる、それが宇宙進出文明たる所以だ。未来を信じ、過去より良い未来を築くこと。そして、宇宙に出て星々の間を旅するほど興奮するものは他にないだろう。」というイーロンマスク氏の発言を抜粋しています。
You want to wake up in the morning and think the future is going to be great – and that’s what being a spacefaring civilization is all about. It’s about believing in the future and thinking that the future will be better than the past. And I can’t think of anything more exciting than going out there and being among the stars.
SpaceX https://www.spacex.com/humanspaceflight/mars/
他にも地球環境への危機感、人口減少(出生率の低下)など人類滅亡危機に対して…と発言することもあるようですが、結局は多惑星種になることへのロマンなのかな?という印象でした。
あとは宇宙進出という難問へ立ちむかうことの好奇心や科学技術発展への野望、NASAも本気で取り組んでいるようですので理屈じゃなくてロマンなんだと思います。
イーロンマスクはなぜ火星を人類移住先に選んだの?
イーロンマスク氏は月は通過点とし、あくまで火星移住にこだわっています。
その理由は下記だと推察されます。
1. 火星の環境は月よりも地球に似ている
- 火星には大気があり、重力は月の約3分の2である。
- 火星には水が存在する可能性があり、将来はテラフォーミングによって地球環境に近づける可能性もある。
2. 火星には資源が豊富
- 火星には水、鉱物、エネルギー資源など、人類が生存するために必要な資源が豊富に存在する。
3. 火星は地球から比較的近い
- 月と比べて火星は地球から遠く、宇宙船の旅には時間がかかるが、技術の発展によって将来的には克服できる距離である。
4. 月は長期的な移住に向かない
- 月は昼夜の温度差が激しく、放射線量も高い。過酷すぎる環境は人口を増やす場所として不適切。
The Moon is not a good place to live. It’s not a good place to raise a family.
2020年に出演したポッドキャストにて
5. その他の惑星へ進出するための中継地点になる
- 火星に住めば、火星から次の地点へ向かう拠点にできる。
Mars is not the end goal. It’s the stepping stone to other planets.
2016年 宇宙国際会議
これらの理由から、イーロンマスクは月よりも火星を人類移住先に選んだと考えられます。
現在の火星上陸に向けた取り組み
SpaceX社は100人を収容できる巨大ロケット、スターシップ(Starship)を開発しました。スターシップは全長120mと世界で歴史上最も大きなロケットです。
2016年当初イーロンマスク氏は火星移住を片道切符だと発言していましたが、スターシップには水を電気分解して水素と酸素を作る「水電解システム」が搭載されているようです。水は希少で、火星にも存在する証明はされてませんが、いずれにせよ水さえあれば火星にない酸素は作れるようです。
またスターシップの燃料である「メタン」もサバティエ反応という化学反応を使うことで、二酸化炭素と水素から生産ができます。メタンガスはほぼ確実に存在する二酸化炭素と水素によって現地生産できるため、帰還も可能です。
ロケットを往復させる計画含めて、SpaceX企業サイトでも発信しているので気になる方はご覧ください。
https://www.spacex.com/humanspaceflight/mars/
まとめ
この領域を調査していると、映画「The Martian(オデッセイ)」を思い出します。大砂嵐に襲われ火星に取り残された主人公マット・デイモンの孤独な奮闘を描く話は宇宙で生きることの過酷さを物語っていました。
火星の過酷な環境を認識した上で、それでも不可能ではないから計画を進める…改めて人類って凄いと思いました。
火星に行く!と発言しているのはイーロンマスク氏だけではありません。NASAも、UAEも、マーズワン社も目指しています。他にも目指している国は企業は存在するでしょう。
火星の解明が進んでいる今、現状だと火星に住めないことは確定ですがそのために100人一気に送り込んで住処を作ろう!その上で人口を増やし続けて最終的に100万人の都市を作ろう!
そんな火星移住計画は正気の沙汰ではないですが、夢があってワクワクします😊
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