宇宙旅行が現実になるにつれ、もう一つの問題が注目されています。**宇宙ごみ(スペースデブリ)**です。地球の周りには使い終わったロケットや衛星の破片が2万個以上漂っており、宇宙船や人工衛星に衝突する危険があります。
この問題に世界で初めて専業で取り組んでいるのが、東京に本社を置く**Astroscale(アストロスケール)**です。
Astroscale社の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 設立 | 2013年 |
| 本社 | 東京都墨田区 |
| 累計資金調達額 | 約3.84億ドル(約445億円)、44の投資家から |
| 上場 | 2024年6月、東京証券取引所グロース市場(証券コード: 186A) |
| 従業員 | 500名以上 |
宇宙ごみ問題の解決に専業で取り組む世界初の民間企業です。
ADRAS-Jミッション — 世界初のデブリ接近調査
ADRAS-J(Active Debris Removal by Astroscale-Japan)は、JAXAの「商業デブリ除去実証(CRD2)」のPhase Iとして実施されたミッションです。
対象は日本のロケット上段(全長約11m、直径約4m、重量約3トン)で、実際のデブリに安全に近づいて調査する世界初の試みでした。
| 時期 | 成果 |
|---|---|
| 2024年2月 | Rocket Lab Electronロケットで打ち上げ |
| 2024年前半 | デブリから数百メートルまで接近に成功 |
| 2024年7月 | 約50mの距離で周囲を回りながら多角度から撮影 |
| 2024年12月 | 約15mまでの接近に成功 |
次のステップ: ADRAS-J2
JAXAのCRD2 Phase IIとして、約132億円の契約を2024年8月に締結しました。ロボットアームを使って協力的でないデブリに取り付き、軌道を離脱させて大気圏で燃やすことを目指しています。
海外の取り組み
| 企業 | 国 | 主な計画 |
|---|---|---|
| ClearSpace | スイス | ESA(欧州宇宙機関)委託のClearSpace-1ミッション。2028年打ち上げ予定 |
| Northrop Grumman | 米国 | MEV(Mission Extension Vehicle)で静止衛星の寿命延長サービスを商用化済み |
デブリ除去の市場規模
| 調査機関 | 2025年の規模 | 2030年予測 | 年平均成長率 |
|---|---|---|---|
| Mordor Intelligence | 11.4億ドル | 16.8億ドル | 8.1% |
| Strategic Market Research | 14.5億ドル(2024年) | 41.0億ドル | 18.7% |
| Grand View Research | 10.5億ドル(2024年) | 20.5億ドル(2033年) | 7.8% |
規制の強化と保険料の上昇により、デブリ除去は「やれたらやる」から「運用上の必須要件」に変わりつつあります。2023年にはFCC(米国連邦通信委員会)がデブリ放置に対して初の罰金を科しました。
日本政府のデブリ対策
- 宇宙活動法(2016年制定): 衛星の打ち上げと管理に許可制を導入。デブリ低減に関するガイドラインを含む
- JAXA CRD2: 日本由来の大型デブリの除去を民間企業と連携して実施する計画。Phase I(調査)→ Phase II(除去)の2段階
- JMR-003: JAXAのデブリ発生防止対策の設計・運用マニュアル(2024年3月制定)
国際的な枠組み
| 枠組み | 内容 |
|---|---|
| 国連スペースデブリ低減ガイドライン(2007年) | 技術面の推奨事項を示す。法的拘束力はない |
| 宇宙活動の長期持続性ガイドライン(2019年) | 宇宙の安全で持続的な利用を目指す規範 |
| 宇宙条約(1967年) | 宇宙活動の基本条約だが、デブリの定義や責任の規定は不十分 |
法的拘束力のある国際ルールはまだ存在せず、国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)を中心に議論が続いています。
宇宙旅行との関係
宇宙旅行が増えるほど、打ち上げ回数が増え、デブリ発生のリスクも高まります。安全な宇宙旅行を続けるためには、デブリ除去の技術と制度の整備が不可欠です。Astroscaleのような企業の取り組みは、宇宙旅行の未来を支える基盤といえます。
参考とした資料