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系外惑星の探し方 — トランジット法・視線速度法・直接撮像で見つかった5,700個以上の世界


系外惑星とは

系外惑星(太陽系外惑星)とは、太陽以外の恒星を周回する惑星のことだ。1992年にパルサー(中性子星)の周りで初めて確認され、1995年にはミシェル・マイヨールとディディエ・ケローが太陽型恒星のペガスス座51番星の周りで初めて系外惑星を発見した(2019年ノーベル物理学賞)。

2025年時点で、確認された系外惑星の数は6,000個以上に達している。TESSの候補を含めると7,000個を超える。人類がわずか30年で達成したこの数字は、惑星が宇宙においていかに普遍的な存在であるかを示している。

主な検出方法

系外惑星は恒星に比べて極めて暗いため、ほとんどの場合は直接見ることができない。天文学者は恒星への間接的な影響を利用して惑星の存在を推定する。

トランジット法 — 最多の発見数

原理

惑星が恒星の手前を横切る(トランジットする)とき、恒星の光がわずかに遮られる。この微小な減光を検出する方法だ。

地球サイズの惑星が太陽のような恒星の前を通過した場合、減光率はわずか約0.01%(1万分の1)。木星サイズなら約1%だ。

得られる情報

  • 惑星の半径 — 減光率の大きさから計算
  • 公転周期 — トランジットの繰り返し間隔
  • 大気の組成 — トランジット時に恒星の光が惑星の大気を通過する際の吸収スペクトルを分析(透過分光法)

限界

トランジット法で検出できるのは、地球から見て惑星が恒星の前を横切る軌道配置にある場合に限られる。統計的には、地球サイズの惑星がトランジットとして観測される確率は約0.5%程度だ。

Kepler宇宙望遠鏡(2009〜2018年)

NASAのKepler宇宙望遠鏡は、2009年から2018年まで運用され、はくちょう座方向の約15万個の恒星を連続的に監視した。その成果は圧倒的だ。

  • 確認された系外惑星 — 2,600個以上
  • 候補天体 — さらに約2,400個
  • 画期的な発見 — 地球サイズの惑星が宇宙に普遍的に存在することを実証

Keplerの最大の功績は、「惑星は恒星の数と同じくらい普遍的」という認識を確立したことだ。天の川銀河内だけでも、地球に似た惑星は数十億個存在すると推定されている。

TESS(2018年〜現在)

Keplerの後継として2018年に打ち上げられたTESS(Transiting Exoplanet Survey Satellite)は、全天の明るい恒星をターゲットにしている。

項目KeplerTESS
観測範囲はくちょう座方向の狭い領域全天の85%以上
ターゲット暗い恒星を含む約15万個明るい近傍の恒星約20万個
確認惑星数2,600個以上604個以上(2025年1月時点)
候補数約2,400約7,372

TESSが明るい近傍の恒星を狙うのは、発見後にJWSTなどで大気の詳細な分析(追跡観測)を行いやすいためだ。

視線速度法(ドップラー分光法)

原理

惑星の重力は恒星にも影響を与え、恒星を微小に「ふらつかせる」。恒星が地球に近づく時は光の波長が青方向にシフトし、遠ざかる時は赤方向にシフトする。このドップラー効果を精密分光器で検出する。

地球が太陽に与えるふらつきはわずか秒速約9cm。木星の場合は秒速約12.5m。現在の最高精度の分光器は秒速約30cmの変化を検出できる。

得られる情報

  • 惑星の最小質量 — ふらつきの大きさから計算(軌道傾斜角が不明のため「最小値」)
  • 公転周期 — ふらつきの繰り返し周期
  • 軌道の離心率 — ふらつきの波形の形から

トランジット法との組み合わせ

トランジット法で惑星の半径がわかり、視線速度法で質量がわかれば、惑星の平均密度を計算できる。密度がわかれば、岩石惑星かガス惑星かを判別できる。

直接撮像法

原理

恒星の光を遮蔽し、その近くに存在する惑星からの光を直接撮影する方法。コロナグラフ(恒星の光を隠す装置)やスターシェード(宇宙空間で恒星の光を遮る人工物)を用いる。

難しさ

恒星と惑星の明るさの差は可視光で約10億倍、赤外線でも約100万倍。太陽-地球系を10光年先から見た場合、地球の光は太陽から約0.1秒角離れた場所で、太陽の100億分の1の明るさで輝くことになる。

そのため、現在直接撮像で発見されている惑星は、主星から遠く離れた若い巨大ガス惑星が中心だ。

成果

2004年に初めて系外惑星の直接撮像が成功した(2M1207b)。すばる望遠鏡の超補償光学装置SCExAOも、直接撮像による系外惑星探査に貢献している。

NASAが計画中のHabitable Worlds Observatory(HWO)は、地球に似た系外惑星の直接撮像と大気分析を主目的とする次世代宇宙望遠鏡だ。

その他の検出方法

マイクロレンズ法

手前の天体の重力が遠方の恒星の光を曲げて増幅する「重力マイクロレンズ」効果を利用する。惑星が関与すると増光パターンに特徴的な変化が現れる。

一度きりの現象のため追跡観測が困難だが、他の方法では検出しにくい遠方の惑星や浮遊惑星(恒星に束縛されていない惑星)の検出に適している。

アストロメトリ法

恒星の位置を精密に測定し、惑星の重力による微小な位置変動を検出する方法。ESAのガイア衛星は、このアストロメトリ法でも多数の系外惑星候補を検出している。

ハビタブルゾーンとは

定義

ハビタブルゾーン(生命居住可能領域)は、恒星からの距離が「液体の水が表面に存在できる」範囲として定義される。温度が高すぎると水は蒸発し、低すぎると凍結する。

太陽系の場合、ハビタブルゾーンは約0.95〜1.67AU(地球の軌道から火星の軌道の少し外側まで)と推定されている。

注意点

ハビタブルゾーンに位置するだけでは、その惑星が「住める」とは限らない。

  • 大気の有無 — 金星はハビタブルゾーンの内側だが、暴走温室効果で表面温度は約460℃
  • 磁場の有無 — 磁場がないと大気が太陽風で剥ぎ取られる
  • 惑星のサイズ — 小さすぎると大気を保持できない
  • 潮汐ロック — 近い恒星を周回する惑星は一面が常に恒星を向く可能性がある

注目の系外惑星

TRAPPIST-1系

わずか40光年先にある赤色矮星TRAPPIST-1は、地球サイズの惑星を7個も持つことで知られる。うち3個(TRAPPIST-1e、f、g)がハビタブルゾーン内にある。

JWSTによる大気観測が進行中で、TRAPPIST-1bとcには厚い大気がないことが示唆されている。残りの惑星の大気分析結果が注目される。

TOI-700 d

TESSが発見した地球サイズの惑星で、赤色矮星TOI-700のハビタブルゾーン内を公転する。地球から約100光年の距離にある。

Kepler-452b

太陽に似た恒星のハビタブルゾーンで発見された、地球の約1.6倍の半径を持つ「スーパーアース」。公転周期は385日で地球に近い。地球から約1,800光年。

プロキシマ・ケンタウリb

最も近い恒星プロキシマ・ケンタウリ(4.24光年)のハビタブルゾーンで発見された惑星。地球の約1.3倍の質量を持つが、赤色矮星の激しいフレア活動により、大気を維持できているかは不明だ。

JWSTが切り開く新時代

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)は、系外惑星研究に革命をもたらしている。

透過分光法の飛躍

トランジット時に惑星の大気を通過した恒星の光を分析し、大気中の分子(水蒸気、CO₂、メタン、オゾンなど)を検出する。JWSTの赤外線観測能力は、ハッブル宇宙望遠鏡と比べて感度が格段に向上している。

2023年にはJWSTが系外惑星WASP-39bの大気中でCO₂を初めて検出し、K2-18bの大気中にジメチルスルフィド(DMS、地球では生物のみが生成する分子)の存在を示唆するデータを公開して大きな話題となった。

バイオシグネチャーの探索

生命の存在を示唆する大気成分(バイオシグネチャー)の検出が、JWSTの重要な目標の一つだ。特に注目されるのは以下の組み合わせだ。

  • 酸素(O₂)+ メタン(CH₄) — 両者は化学的に反応しやすいため、共存していれば生物による継続的な供給が示唆される
  • オゾン(O₃) — 酸素の存在を間接的に示す
  • ジメチルスルフィド(DMS) — 地球では海洋プランクトンのみが生成

日本の系外惑星探査

Exo-JASMINE

JAXAが開発中の小型衛星ミッション「Exo-JASMINE」は、近赤外線での高精度位置天文観測により、天の川銀河中心方向の恒星周囲の系外惑星を探査する計画だ。

すばる望遠鏡

ハワイのマウナケア山頂にある国立天文台すばる望遠鏡は、直接撮像法やドップラー法で系外惑星探査に貢献している。超補償光学装置SCExAOとIRD(InfraRed Doppler)分光器が活躍中だ。

まとめ

系外惑星の探査は、わずか30年で「1個の発見」から「6,000個以上の確認」に至った。トランジット法と視線速度法が発見数の大半を占め、直接撮像法やマイクロレンズ法が補完している。

今後の焦点は「発見」から「特徴づけ」へと移行している。JWSTによる大気分析、将来のHWOによる直接撮像で、ハビタブルゾーンの地球型惑星にバイオシグネチャーが検出される日が来るかもしれない。それは人類史上最大の発見となるだろう。

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参考としたサイト

系外惑星の探し方 — トランジット法・視線速度法・直接撮像で見つかった5,700個以上の世界

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