約50年ぶりに人類は月面着陸を再度成し遂げようとしています。昔と比較すると宇宙旅行は1970年代と比較すると遥かに安くなりました。STATISTAによるとアポロ計画での有人飛行は一回の飛行で少なくとも現在の価値に換算すると約2,000億円~約6,000億円かかっています。そして現在、当初は考えられもしなかった「民間企業」が宇宙開発に乗り出し、価格破壊を起こしながら有人飛行が可能なロケットを火星まで飛ばそうとしています。
この記事ではアポロ計画とSpaceX社のロケットを比較しながら米国のロケット開発の歴史を振り返ります。
アポロ計画で使ったロケット概要
製造にかかったコストに大きな差が出ていますが、実は今SpaceX社が開発している月面着陸用ロケット「スターシップ」と大きさはほぼ同じです。
サターンV(アポロ11号)とスターシップ(SpaceX)スペック比較
カテゴリ
サターンV
スターシップ
全高
110.6m
121 m
直径
10.1m
9 m
重量
3,038トン
4,400 トン
低軌道ペイロード
118,000kg
250,000 kg 程度
月軌道ペイロード
47,000kg
100,000 kg 以上
製造+打ち上げ
総額:65億ドル*1(2024年 約10兆円)
製造:約50億ドル(2024年 約1兆円)
一回あたりの打ち上げ
約2,000億円~約6,000億円
1000万ドル以下(約15億円)
*1 1966年当時のコスト
全長や直径、重量に大きな差はないものの「ペイロード」は約2倍の差があります。スターシップはサターンVと比較すると、2倍以上貨物を入れられるということです。
またコスト面も大きく異なります。もし今、一回の打ち上げに約2,000億円かけていたら反対は免れないでしょう^^;
なおJAXAのH3は一回あたりの打ち上げに100億円かかるとされています。全長66メートルでペイロードは4,000 kgほどなので、サターンVじゃないと月面着陸は実現しませんがそれでもH3は発射にかかるコストを頑張って抑えてるのかもしれません。
サターンロケット飛行の歴史一覧
スクロールできます
ロケット
計画
打ち上げ日
搭乗員
実績
打ち上げコスト
サターン IB
アポロAS-201
1966年2月26日
検証実験
サターン IB
アポロAS-203
1966年7月5日
検証実験
サターン IB
アポロAS-202
1966年8月25日
検証実験
サターン V
アポロ4号
1967年11月9日
検証実験
サターン IB
アポロ5号
1968年1月22日
検証実験
サターン V
アポロ6号
1968年4月4日
検証実験
サターン IB
アポロ7号
1968年10月11日
有人
初のテレビ中継
地球周回軌道163周
約2,000億円
サターン V
アポロ8号
1968年12月21日
有人
月周回軌道へ
約4,000億円
サターン V
アポロ9号
1969年3月3日
有人
船外活動
約4,600億円
サターン V
アポロ10号
1969年5月18日
有人
月面着陸準備
アポロ11号着地予定の場所「静かの海」を確認
約4,600億円
サターン V
アポロ11号
1969年7月16日
有人
人類初の月面着陸
約4,600億円
サターン V
アポロ12号
1969年11月14日
有人
二回目の月面着陸
部品回収
約4,600億円
サターン V
アポロ13号
1970年4月11日
有人
事故発生
無事に帰還
約4,600億円
サターン V
アポロ14号
1971年1月31日
有人
月の石を持ち帰る。
約6,000億円
サターン V
アポロ15号
1971年7月26日
有人
より大きな月の石を持ち帰る。
約6,000億円
サターン V
アポロ16号
1972年4月16日
有人
約96キロとさらに大きな月の石を持ち帰る。
約6,000億円
サターン V
アポロ17号
1972年12月7日
有人
地質学者も同乗、約115キロの石を持ち帰る。
約6,000億円
サターン INT-21
スカイラブ1号
1973年5月14日
宇宙ステーション
1973年-1979年まで稼働。
サターン IB
スカイラブ2号
1973年5月25日
有人
スカイラブ実験
28日間
サターン IB
スカイラブ3号
1973年7月28日
有人
医療・太陽観測・地球資源探査その他の分野で科学実験
59日滞在
サターン IB
スカイラブ4号
1973年11月16日
有人
84日滞在
サターン IB
ASTP
1975年7月15日
正式名称アポロ・ソユーズテスト計画
宇宙戦争の終わりを象徴する
コストはかなり乱暴な計算をしている部分もあります。インフレーションはこちらを活用しました。
アポロ計画が17号でストップしている1番の理由が「コスト」だとされていることを考えると、宇宙飛行へのコスト削減は大きく進捗していると言えます。次に大きな理由とされるのは国際宇宙ステーションの建設に注力するようになったためとされます。前身となるのは米国の宇宙ステーション「スカイラプ」。アポロ17号を打ち上げた翌年の1973年に打ち上げを成功させ、複数回にわたって実験も行っています。
なぜ一回の打ち上げで約6,000億円もかかるのか
答えは再利用型ではないからです。使い捨て方式の液体燃料多段式ロケットのため、次の打ち上げにまたゼロから機体を作って飛ばしています。
ここまでの予算をかけられた背景
1961年アポロ計画がスタートした当初、アメリカはソ連(ロシア)との宇宙戦争で大敗していました。ソ連は1957年10月には初の人工衛星「スプートニク」の打上げに成功し、1961年4月には宇宙船「ボストーク」とそれに搭乗したユーリイ・ガガーリンによる人類初の有人飛行をも成功させました。
起死回生の一手として、当時の米国大統領ジョンFケネディ氏がロシアよりも早く月面着陸することを決意しました。ロケット開発は1961年のアポロ計画正式承認と共にスタートし月面着陸においては米国が勝利することとなりました。
なお1975年にアメリカとロシアが協力しサターンIBを打ち上げたことにより宇宙戦争は終焉しています。
サターンVは歴史上唯一、月面着陸を成功させた有人飛行ロケット
打ち上げコストが高かっただけに、失敗は許されませんでした。トラブルはあったものの、一人の死者も出しませんでした。
SpaceX社のスターシップは最も最新のロケットで、2024年3月のテストでも打ち上げは成功していますが帰還は失敗しています。現在日本で開発している最も大きなロケット「H3」は有人飛行を実現したことがありません。それ以外の民間宇宙ロケットでも、全長110メートルといったサイズのものは作っていません。冷戦時代ロケット開発に関われなかった日本の技術だと、まだサターンVを開発する技術はないのかもしれません。
月までの距離を飛んで、月面着陸を成功させ、かつ帰還に成功しているのは唯一「サターンV」のみです。旧ソビエトもSpaceX社もサターンVを超えるロケットは作りましたが、実用段階ではありません。よってギネス記録ではサターンVが史上最大のロケットとして認定されています。
まとめ
米国だけでなく、中国やロシア、インドも月面着陸を目指して頑張っていますが、莫大なコストがかかったとしても偉業を成し遂げているのは率直に凄いと思いませんか?
今は3Dプリンターも導入され、量産化体制を整えることが出来るようになりました。
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